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2024年12月16日

ジーパンのミリポリ22リターンズ


"MGC Military Police .22 Custom"

NTV系刑事ドラマ「太陽にほえろ!」のジーパン刑事(松田優作)が登場後期に専用モデルとして所持していた、という設定のプロップガンはミリタリーポリス22というリボルバーでした。

ホームページ版や旧ブログで何度も取り上げてきたのですが、見返してみると情報があまり残ってないので、再び取り上げます。

初登場は第82話『最後の標的』(1974年)でした。
実際に使用されたプロップガンはMGCのABS樹脂製モデルガンであるハイウェイパトロールマン41(ハイパト)をベースに22口径風のロングバレル化、固定サイト化、グリップの形状加工などが施された特製品となっています。

画像の個体はどちらも個人カスタム品です。
上がMGC44マグナム(SW11)ベースでカスタム品を中古購入したもの、下がMGCハイパト(SW10)ベースで友人にカスタム加工してもらったものです。



劇中使用プロップガンはカートリッジまで22口径風にカスタマイズされたアップ用と、シリンダーのみノーマル(41マグナム)となっている発火用の2種類が確認できます。
これは当時、作中で使用されていたハイパトのプロップは41カートリッジだったため、22口径版の発火用カートリッジが存在しないため、と思われます。
ただし、発砲シーンのみシリンダーを発火用に交換し、本体はアップ用と発火用で使いまわして可能性もあります。



左がハイパトベースで発火用をイメージしたノーマル41シリンダー、右がアップ用をイメージした22シリンダーとなっています。

22版はエキストラクター(エジェクター)もリムが引っかかるように加工されています。
エジェクト操作もできる構造にはなっていますが、壊れると自分では修理できないので、そーっと動かすようにしています。



固定型のリアサイト(フィクスド・サイト)に加工されています。
ノーマルのモデルガンではハイパトも44マグナムもフレーム一体成型のプラスチック製のKサイト(調整機構はモールドでダミー)となっているため、それを削り落として、固定サイト形状に彫り込んであります。

この加工がかなり難易度が高いと思います。
かつて自分で同じようなカスタムを自作しようとしてうまくできず、断念した経験があります。



44マグナムベースはシリンダーの22化など、非常に多岐に渡るカスタマイズで気に入っていますが、どうしてもハイパトベースのミリポリ22がほしくて友人に無理を言って、バレルにクラックのある程度の悪いハイパトを預けて加工してもらいました。

44ベースでもハイパトベースでも、ミリポリ22の形状まで外観を加工してしまうのであれば、その差は大したことはないのですが、刻印が"SW10"であること、とサムピース下にMGCロゴが入っている、というのは太陽~好き、ハイパト好きとしては、どうしても実現したい部分でありました。

貴重なハイパトをカスタムするなんて、と思っている方でもクラックだらけでジャンク寸前の個体であれば、カスタマイズに挑戦してみても良いかなーと思いました。



ジーパンのハイパト22で、もっとも個性的で特徴的なバレル形状。
公式な設定資料やカスタマイズ情報があるわけではないので、正確な長さや形状などは不明です。
なので、写真や映像で仕様を読み取ることしかできないので、製作者の解釈によっても異なる部分はあると思います。
若干の形状の違いはありますが、双方とも再現度が高く、「どう見てもジーパンのミリポリだ」と理解できるという仕上がりで、製作者の番組愛を感じることができます。

旭工房の仲代氏もジーパンのミリポリ22は何度も製作チャレンジしたそうで、どの写真、どのシーンに解釈を合わせるかで仕様を決めていたそうです。
それだけ角度などの見え方で解釈が変わってしまうのが、このミリポリ22という劇中モデルの特徴なのかもしれません。


ハイパト41ベースのカスタムと並べてみました。

ミリポリ22改、ノーマル、コンバットマグナム改です。

映画・ドラマの世界において、リボルバー型プロップガンの需要は昔から高かったと思いますが、1971年に銃刀法改正で黒い金属リボルバーが使えなくなってから、1972年に登場したプラスチックモデルガン、MGCハイパト41が救世主だったことは有名です。
中間的でオールマイティだったノーマルの3.5インチの活躍はもちろん、バリエーションとして長くなったり短くなったハイパト改が活躍した時代がありました。
その後、1974年にMGC44マグナム、1975年にMGCローマンが登場したことで、過渡期のハイパト改たちは姿を消していきました。

1972年から数年間の短い間にもかなりのハイパト改が登場していたことを覚えている方も多いと思います。

その中でもミリポリ22はジーパン専用プロップガンとしてわずかな期間の活躍ながら、強烈な記憶を残したといえるのではないでしょうか。

◆◆◆
太陽にほえろ!第82話「最後の標的」は初期の名作です。制作側もそう思っていたのでしょう。同じ「太陽にほえろ!」の後期にセルフリメイクされたりしました。



警察官である父親を銃犯罪によって失ったジーパン(松田優作)は、自身が銃を持つことに長く抵抗があり、1年間の登場期間(第53話~第111話)のうち、前半は銃を装備しません。
刑事としての成長過程において、命を守るために銃使用が時に必要だと悟り、第72話「海を撃て!ジーパン」でノーマルのハイパト41を持ち始めます。

そしていよいよ第82話「最後の標的」でミリポリ22を持つに至ります。以降、殉職話である第111話「ジーパン・シンコその愛と死」まで愛用します。



第82話では先輩の根来(北村和夫)がジーパンに射撃の極意を特訓します。
(根来役の北村和夫氏は松田優作氏と同じ文学座の先輩俳優でもあり、俳優の北村有起哉氏の父上でもあります)

根来は射撃の名手で自宅にあらゆる銃を撃っている写真を飾っています。
ジーパンがこの写真パネルの銃に興味を示す、というのがミリポリ22の初登場場面となります。
根来いわく「命中精度は抜群だが威力が弱い競技用の銃」とのことでした。

いまだ銃を持つことに懐疑的なジーパンは「命中精度が良く、威力が低い銃なら、うまく撃つことで、さほど人を傷つけずに済むのでは」とミリポリ22に目を付けました。

ちなみにこのジーパンの気持ちは台本上のセリフとして具体的に発するシーンはありませんが、表現描写で語られ、後半話にもそのようなシーンが登場します。



ジーパンは本庁に保管されているミリポリ22と弾をむりやり持ち出します。
見えづらいですが、弾の箱はMGCモデルガンのハイパト41用とおぼしきパッケージをそのまま使用しているように見えます。



装填シーンでは22LR風のカートリッジを1発づつシリンダーに込める表現があります。
バレルはマズル部分まで細く仕上げられ、「小口径の銃」であることが見事に表現されているのが分かります。



ラストシーン近く。ミリポリ22を無断で持ち出したジーパンはボスの温情で始末書のみで正式装備とすることが認められます。
ボスの懐が深すぎます。。。こんな上司がいたら良いですねー。

ここでは戦前風に加工されたMGC純正グリップが確認できます。
フレームトップの固定サイトの様子はその他のシーンで確認できます。

ミリポリ22プロップガンは当時に存在した東京メイクガン(TMG)がプロップガン製作に関わったとされています。
TMGでは「太陽にほえろ!」や「大追跡」に登場するプロップガンと同様の外観を持ったショップカスタムを製作販売していました。

ミリポリ22が戦前仕様のようなカスタマイズとなっていますが、これはTMG製作のハイパトベースのM1917と製作工程が近いことが関係していると推測しています。

TMGのM1917改では固定サイト化や削り出し新規作成の真鍮製ロッキングボルトの装着など、類似箇所の特徴が見られます。

ただ、登場話は失念しましたが「太陽にほえろ!」で制服用として使用されたM1917風は簡易カスタムだったのかリアサイトの掘り込みが無いバージョンを見た記憶もあります。



屋外の発砲シーンでは光の関係でバレルが太く見えることがありますが、実際には登場するのは細長バレルだけではないかな、と思います。

私はこのあたりの印象があって、いちばん最初に「ジーパンのミリポリ22風」を再現しようと自作したのが国際の旧ハイパト6インチのリブを削り落としたものでした。
そんな加工だけではバレルが太いままで、M1917の出来損ないみたいなヘンテコな雑カスタムでした。

何度か見直すうちに、「本当はすごく細い」というの気づいたものの、22バレルをどう再現したら良いのかわからず(ベースモデルを削る手法しか知らず、削りがインナーバレルに達してしまい、細くできなかった)、結局自作という道はあきらめ、何十年後に誰かが作ったものを入手する、ということしかできなかったのでした。



ジーパンが追っていた凄腕スナイパーの正体は根来。師弟対決となりました。
根来を最小限のダメージで倒したジーパン。ただ根来は病に。。というシーン。
根来の手に握られているのは戸井田工業製と思われるルガー型の電着銃です。

ルガーはすごい銃だ、と山さん(露口茂)が語るシーンもありました。
ボス(石原裕次郎)の装備としても知られるルガーは作中で最高峰の性能を誇る銃という設定でした。

◆◆◆

【参考】海外サイトで見つけた実物画像



"Smith & Wesson M45 Military Police .22"

「ジーパンのミリポリ22って実在するのかな?」という疑問は放映を最初に見た時に思ったことです。

当時の制作側がどの程度の裏付け取材をしたのかは不明ですが、同名の実物は存在します。
見た目は見慣れた38口径のミリポリとほとんど変わりませんが、22LR(リムファイア)となるためにファイアリングピンがフレーム側に内蔵されているのが、よーく見ると分かります。

文献を確認するとアメリカの警察から、射撃練習用としてS&W社に発注され、製作されたことが確認できます。

ミリポリ22が射撃練習用というモデルであれば、低価格の.22LR弾を使用して訓練費を抑えることができる、という意味で警察装備という説得力はあります。
ただ、アメリカならまだしも、日本ではそういった目的(練習用のみ)で調達してないのではないかな、とも思います。
作中で「競技用」を示すセリフがあるので、ミリポリが固定サイトというのが気になるポイントですね。
競技用は調整式サイトの方が望ましいと思われます。
その昔、警察内の競技会でニューナンブを使用しているニュース映像を見た記憶もあるので、ミリポリが競技用としてふさわしくない、とまでは言い切れませんが。。


"Smith & Wesson M17 Master Piece .22"

勝手な推測ですが、マスターピース22をイメージしていたのであれば、かなりリアルな感じだったかもしれません。
実際に元警察官の方に選手としてSWマスターピースを使っていた、という話を伺ったことがあるからです。
ただ、22口径ではなく、もっと大きい口径だったような事をおっしゃっていました。
ちなみに手持ちの古い日本警察の資料(1970年代)によると、『訓練用(矯正)コンバット・マスターピース口径22』という文面のみ発見しました。

なので、ジーパンが本庁から勝手に持ち出す競技銃、という設定であるならマスターピースでも良かったのかなー、なんて思ったりもするのですが、なぜそうしなかったのでしょうか。
当時、TMGではハイパト改マスターピース(2インチ)も製作していたので、技術的にも知識的にもハイパト改マスターピース6インチというのも製作できたと思うのです。

「製作の必要上、M1917と近い仕様にしたかった」とか、
「ジーパンには細いテーパーバレルの方が似合った」とか、
「小口径で弱々しいというのを視聴者にアピールする必要があった」とか
そんな感じのことが思い浮かびましたが、今となっては真相は不明です。

ただ、よく考えて見ると、マスターピース6インチをジーパンに持たせていたら、ノーマルのハイパトより大きい銃ということで超強力銃だと思われてしまう、というミスリードを警戒したのかもしれません。
映画の「遊戯シリーズ」や「俺たちの勲章」で松田優作氏は44マグナムを持っていて、見た目だけで、いかにも威力が強そう、というイメージに映っていたような気がします。。

予備知識が無くても「弱い銃」だとわかるように表現するのって、結構難しいことですね。。

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2024年11月29日

ニューナンブ77ミリ風


"Kokusai M60 New Nambu Type Custom"

コクサイのモデルガン、M60チーフスペシャル・ステンレスをベースとしたニューナンブ風のカスタムです。

本物のニューナンブM60リボルバーは純日本製の警察装備です。新中央工業(現ミネベアミツミ)製で38スペシャル5連発のDAリボルバーでS&Wチーフを参考に設計されていると言われています。
街のお巡りさんが装備していることも多いですが、蓋つきホルスターで中身はほとんど見えません。身近でありながら一般市民はまず見ることが無いミステリアスな装備です。

余談ですが、かつて京橋の警察博物館に長らくニューナンブの本物が展示されていて(残念ながら撮影禁止のため記録なし)、何度か見学に行きました。サイズはチーフより一回り大きいのかな?という印象でした。

近年ではS&W M37エアウェイトやM360Jサクラなど輸入装備が台頭し、国内で内製する必要が無くなったことからニューナンブは生産中止になったようです。使用頻度が低く、急激に劣化するものでもないので、継続して装備されている感じですが、徐々に数は減っていくのだろうと推測します。

現在ではランヤードリングの付いたM37やM360JやJポリス(ニューナンブ風モデル)などのモデルガンが発売されていますが、かつてモデルガン業界は「日本の現行制式モデルは製品化しない」という暗黙のルールがあったと言われ、ニューナンブやゴールデンベアといったモデルが製品化されたことがありませんでした。



この個体の入手時期はかなり前ながら、カスタム箇所はバレルの他、グリップ、フレームトップ、リアサイト、サムピース、フレームラグ、シリンダーフルート、ハンマー、刻印など多岐に渡る当時としてはフルカスタムと言えるスペックとなっています。

コクサイM60がベースなので内部パーツにシルバー仕上げが残っていたり、とわずかな元の姿の名残があります。

中古入手のため、製作者不明ですが、前オーナーは「たぶん旭工房」と言っていました。
フルート加工のカタチとか、ちょっと旭工房と違う感じもしますが、新規作成バレルやエキストラクターロッドが旭工房っぽいので、最初のオーナーの特注か別のショップによる追加カスタマイズが入っている可能性もあります。
もはや確かめようもないので、その辺りは気にしていません。ただ、非常に全体的なフォルムがそれっぽくて格好良いので手放さずにずっと持っています。



コクサイベース(左)とHWS Jポリス(右)の比較
HWSは指かけ部が延長された後期タイプのグリップを再現しています。

カスタム扱いながら、セミ量産品という感じのHWSの登場により、プロップガンも一気にニューナンブ風が席巻するのかと思いきや、残念ながら、そうはなりませんでした。
なぜHWSがプロップガンに多用されていない、という理由は定かではありませんが、銃撃戦などアクションが刑事ドラマでは少なくなってきたのも一因ではないかと思っています。

とは言え、いつの時代もドラマや映画などで警察装備の登場シーンは多く、ニューナンブのプロップガン需要も高いと思います。
その昔、制作側は似たような形のモデルガンで代用したり、小道具担当が一品物として製作したり、といった形で長らくしのいできました。
1970年代から1980年代の日本作品における警察装備は刑事がローマン2インチ、制服は4インチ、みたいなシーンは非常に多く、その期間も長かったと思います。私もテレビで刑事ドラマを見るようになった時代はそんな感じでした。

それでも電着チーフやローマンを何となくニューナンブ風に見えるような外装にしてみたり、実際に採用されているであろう他機種のチーフやブローニングを持たせてみたり、と可能な限りの工夫も見られました。

1990年代初頭には「刑事貴族3」「俺たちルーキーコップ」「眠らない街・新宿鮫」とリアルな見た目のニューナンブ風プロップガンが活躍し始めました。
多くの作品でリアルなニューナンブ風プロップが活躍し始め、製作者も多数いたと思いますが、旭工房製が最も多かったのでは?という印象です。

モデルガンの世界も同様に、HWS Jポリスの登場前はショップか個人がカスタマイズすることでしかニューナンブ風のモデルガンを持つことができませんでした。
ベースモデルとしてはCMC製あるいはコクサイ製モデルガンのチーフが多くを占めていたと思います。

古くは愛知のキヨノアームズがCMCベースでカスタムを販売しており、中古入手した事がありました。
細部までカスタマイズされ、とても凝った造りでリアルでしたが、「ベースを削ってフォルムを整形していく」という手法だったらしくサイズ的には小ぶりな印象を受けました。
旧ブログで画像を載せていましたが、手放してしまったので既に手元にはありません。今考えると惜しいことをしました。。



キヨノアームズ同様、CMCチーフを土台にHWSが販売したJポリスもグリップ付近のフレーム肉盛りもあってボリュームアップしていますが、まだまだスマートな感じです。
左のコクサイベースはフレームトップが肉盛りされ上面もフラットに整形されているので、"ニューナンブらしさ"が強調されているように思います。
ということはHWSもフレームトップを盛れば、よりリアルなルックスになるのかもしれません。

個人的な印象としてはガスガンながらマルシンのポリスリボルバーが実は一番似ているのでは、という印象を持っています。

なのでチーフをベースにニューナンブ化するのは結構大変なことなのだと思います。。



「世界拳銃図鑑」のニューナンブ記載ページ。
とにかく記事など資料が少ないので、ちょっとでもニューナンブが載っているとすごく嬉しくなってしまいます。

だいたい、どの書籍も白黒の片面全体写真が載っている感じで詳細がつかみづらいのが難点です。
Gun誌で試作品とおぼしき77mmのカラー写真がありましたが、他にはニュース記事の通常点検や訓練シーンなどの、ちっちゃい写真を穴が開くほど見たりして、なんとか情報を知りたいと努力してました。

今回は書きたい内容が多すぎて長くなるので今回は77mmのみを取り上げていますが、いずれニューナンブ51mmについても資料・情報を整理して載せるつもりです。

◆◆◆

「太陽にほえろ!」でラガー刑事(渡辺徹)の登場初期(1981年)に登場したニューナンブ77mm風のプロップガンです。

MGCローマンをベースに3インチ程度にバレルが整形され、フロントサイト形状やダミーながらロッキングボルトを再現したニューナンブ改は当時としては画期的だったと思います。
発砲用と思われる電着式の戸井田工業製チーフも同様の外装カスタマイズが施されたものを併用していたようです。
ただニューナンブ改の活躍時期は短く、ラガー刑事の使用銃はMGCパイソン4インチに固定されました。前任のスニーカー刑事(山下真司)が末期に使用していたので、引き継いだ感じの印象です。

◆◆◆

「刑事貴族3」(1992)の吉本刑事(彦摩呂)が持つニューナンブ風プロップ。サイドプレートのラインよりコクサイがベースとなっていることが分かります。かなりリアルに再現されていますね。

「宝石箱や~」とは言ってない頃の彦摩呂さん、刑事貴族では若くてカッコいい刑事でしたよね。

上のラガーもそうですが、ハンマーコックの状態でトリガーガードに指を入れるのは超こわい!!と思ってしまいます。。俳優さんがついやってしまってる行動だと思うのですがヒヤヒヤします。
おそらく現在はアクション指導とかもしっかりと行っていると思いますが、トリガーガードに指が入ってるからNGとなるかどうか、というと、撮り直しの手間やロスを考えると見なかったことになってしまっているのかも。

こういうことを言葉にすると「細かいなぁ。素直に楽しみなよ。これだからガンマニアは。。」と思われてしまうので、声には出さないようにしています。
ただ得意分野や趣味のところは、どうしても気になってしまいますので、自分の中で消化するようにしてます。

◆◆◆

前回に引き続きの紹介となりますが、ニューナンブ77mm登場作品というと避けて通れないのが映画『駅Station』(1981)です。
実物が出てくるという異例かつ衝撃的な作品です。

主人公の警察官、英次(高倉健)が物語終盤で任務の為にニューナンブ77mmを使用します。

健さんの弾込めシーンはMGCローマン2インチ、その後に本職のニューナンブ装填シーン、そして健さんの発砲シーンはMGCローマン3インチ改と繋がります。
「太陽にほえろ!」と同じ東宝作品なので、ひょっとするとラガー仕様と同じかもしれません。

その他のシーンで1980年前後の「太陽にほえろ!」でロッキー刑事(木之元亮)が使用していたハイパト改に似たプロップガンも出てきたりします。
(冒頭の射場シーンや岡持ちに扮して潜入するシーンなど)
やはり東宝の小道具という共通点なのでしょうか。
映画にはプロップガン関係のクレジットが見当たらなかったので、詳細は不明です。。

これらは粗い手持ち映像を見た、私の個人的な見解なので、この見立てが必ずしも正しいとは限りませんので、話半分で流していただければ、と思います。

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2024年11月27日

V、V、ビクトリー


"Kokusai Military Police Victory Custom"

DAリボルバーの基本形のひとつ、SWミリタリーポリス、通称ミリポリはモデルガン、エアソフトガンで何種か製品化された人気モデルです。

なんと19世紀の1899年に原型が発売されたミリタリーポリスは"M1905"で既に現在の姿がほぼ完成されており、その後の長きに渡って改良が繰り返され現在に至ります。
その名前が示すとおり、軍用・警察用としての使用例が多く、中でもWW2禍の1942年から1944年に何十万丁も製造されたVシリアルの通称「ビクトリーモデル」はアメリカやイギリスの軍用として使用された他、戦後の日本の警察装備として貸与されたので非常に馴染みのあるモデルとなっています。

ビクトリーなどの軍用モデルにはランヤードリングが取り付けられているのが特徴で、外装もグリップも簡素な感じなものでした。
市販モデル(コマーシャルモデル)はピカピカなブルー仕上げでグリップもメダリオンとチェッカリングの入った豪華なものがついています。

日本において、1965年あたりに六研が亜鉛合金製モデルガンを発売したことが当時のGun誌に載っていました。(実物は見たことありません)
その後に六研にそっくりな国際産業製ミリポリが登場。1978年の銃刀法改正前後に国際が全面改良したニューミリポリを発売します。

非常に意外な事実なのですが、メーカー純正のカタログモデルでランヤードリングの付いた軍用ミリポリは、モデルガンではこの国際製ニューミリポリ(2代目ミリポリ)だけなのです。

ハートフォード(HWS)のミリポリは?と思うかもしれませんが、これはカスタム扱いで当初シリアル番号の入った限定生産品でした。その後も断続的に生産され、セミ市販モデルっぽい位置づけとなっていますが、正規カタログモデルではない感じかと思います。

1983年に国際産業改めコクサイはコマーシャルモデルのABS樹脂製ミリポリを発売し、これは大ヒット傑作もモデルガンとなりました。
コクサイとしては金属時代から通して、3代目のミリポリとなったわけですが、先代とは変わってコマーシャルモデルのみとなりました。



そこで、登場したのがハートフォード。1980年代中頃のカスタム品です。
あれ?そんな早くに発売されたっけ?と思う方もいるでしょうが、これはカスタムショップ時代のハートフォードが製作したコクサイ改ビクトリーモデルです。

義務教育の頃の私はランヤードリングのついたリボルバーにすごく憧れていて、Gun誌かCM誌の広告を見て、とにかく欲しくてたまらなくなりました。
小遣い銭を貯めてヘタクソな字で注文を書いた紙きれを入れて、現金書留でハートフォードに送りました。

実はその前に「ステージガン通販詐欺」という苦い被害経験があり(雑誌広告見て現金書留を送ったが商品が届かずじまい)、ショップ通販に対して疑いというかあきらめ半分といった思いで到着を待ってました。

案の定、ハートフォードからも中々商品が届くこともなく、何か月も経って「やっぱりか」とあきらめて忘れてしまいそうになったころ、ついに届いたので、すさまじく感激しました。

『ベースモデル(ミリポリの組立キット)調達困難ゆえ、製作が遅れましたことをお詫びいたします。
 一度も督促することも無く、辛抱強く納品を待っていただいたことに感謝します』


みたいな内容のお詫びの手紙が入っていました。
いろいろと怖くて進捗状況が聞けなかっただけで一度も問い合わせの電話1本もできませんでしたが、ハートフォードというショップの誠実さを知り、この先の永遠の尊敬と信仰を堅く誓った記憶があります。

そんな感じで以降もちょいちょいショップ時代のハートフォードカスタムを購入していくのですが、最初がこのミリポリだった、という思い出話でした。

購入から既に40年くらい経っているので、だいぶ褪せてきていますが、今でも大切にしています。

コクサイABSミリポリにシルバーメッキを施した上にパーカーライズド風のメタルフィニッシュになっています。
フロントサイトは半月タイプに、ハンマーとエキストラクターロッドもビクトリー風に、ランヤードリングとスムーズ木製グリップが装着されています。
ダミーながら5スクリュー化もされています。

最初についていたカスタムハンマー(おそらく元のスパーは削り落とし、硬化パテ状のものでスパーを建造したもの)はスパー部が欠損し、間に合わせでノーマルのハンマーを少し加工して交換しました。
また、ランヤードリングも丸い輪っか状のものでしたが、これも後に交換しています。

まだ子供だったのでカスタムなのに遠慮せずバカスカ発火して遊んでましたが、メッキが剥がれることもなく、とてもタフなメッキ層だったのだと感心しています。


次に入手したビクトリーは旭工房製カスタムです。
社会人になって、少しだけ趣味にお金を掛けられるようになり、がんばれば(何かをガマンすれば)少し高めのショップカスタムを買えるようになりました。

このカスタムもコクサイABSミリポリがベースとなります。
カスタム内容はハートフォードとほぼ同様(同じビクトリーを目指しているから当たり前ですが)です。
さらにシリンダー短縮化、フォーシングコーン延長、カウンターボア廃止、フル刻印といった加工が追加となっています。
なぜかトリガーガードのシリンダーストップスクリューだけ無加工で付いていないので、結果的に4スクリュー仕様となっています。(おそらく実物にその仕様は存在しないと思います)

圧巻なのは至るところに入った刻印で、これを見ているだけで気分も上がってくるほどの素晴らしい加工です。

HWSやタナカからミリポリが発売されても、色褪せない魅力があるなー、としみじみ思ってます。


そしてある日、彗星の如く登場したハートフォード(HWS)のビクトリーモデル。
これは東京CMCのM19モデルガンの金型を引き継ぎ、リバイバル生産しているハートフォードだからこそ実現したセミ量産カスタムです。

M19をベースにしているとは言え、フレーム、バレル、シリンダー、ハンマー、サムピース他、ほとんどのパーツが新規設計となっている意欲作です。
もはやM19とは別製品と言っても良いのでは?というくらいのモデルガンです。

ビクトリーのモデルガンもここまで来たか!というほどの感動をもたらしてくれました。
ひょっとしたらショップカスタム時代にやりたかった事も全て詰め込んだのでは?と勝手に勘繰りたくなるほどの気合の入った製品です。

画像の個体はシリアル入りの初期生産物です。
ただ、残念なことにフレームのシリンダー脱落防止スタッドはCMC時代と同じ形(ちょっと変)のままなのです。後にこれは金属の別部品に改良されるので、現行品の方がリアルで格好良いです。

とは言え、発売直後にがんばって4インチと5インチを2丁買いそろえ、非常に気に入っていたので、新スタッドの改良品に買い替えてはいません。

個人的にはバレル刻印をもうちょっと小さくしてくれたら(現行はちょっと文字が大きいのが気になります)、買いなおす、ではなく2丁とも買い足してしまうかもしれません。。


3丁の比較。
上からコクサイ(ハートフォード改)、コクサイ(旭工房カスタム)、HWSです。

細かいところを見ていくと、いろいろ気になるところありますが、どれも非常に良くできていると思います。
面白いのが、やっぱりハートフォード製のショップカスタムとHWSオリジナル製品で何となく似ているところですね。

ミリポリもハイパトもそうですが、テーパーバレルというのはとても魅力がありますね。個人的な好みではあるかと思いますが、ストレートとテーパーなら間違いなくテーパーの方を選んでしまいます。


旭工房とHWSはバレル上にも刻印が入っています。
HWSのUSプロパティ刻印は後で入れてもらったものですが、これがあると軍用っぽさがグっと上がります。


左からHWS、コクサイ(旭工房カスタム)、コクサイ(ハートフォード改)です。

旭工房はグリップフレーム下部のシリアル刻印も再現されています。すごいですね。


トリガーガードのスクリュー。
ハートフォード改はダミースクリューです。MGCハイパトや44マグナムと同じですね。
旭工房には入ってないので、そのうちダミースクリューを打っておきたいな、と思いながら何十年も経ってしまいました。不器用なので躊躇してしまいます。。
HWSは何と実物どおりの構造で、トリガーガードのスクリュー穴からプランジャーとスプリングを入れた上でスクリューでフタをする感じで固定します。

この構造を始めてみた時、とても感動しました。


【参考】海外サイトで見つけた実物画像

これは戦前の骨董品ながら良好な状態が保たれている実物です。
ソックリですね。なんか日本のモデルガンって本当に良く出来てるんだなーと思います。

やはりHWSにはこんな感じでバレルのスモール刻印を再現してほしいですね。それで全てが完璧になります。

◆◆◆




ミリポリのビクトリーのプロップガンが出てるシーンなんてあったかなーと記憶を紐解いてみると、ひとつだけ思い出した作品がありました。

映画『駅 Station』(1981)のワンシーンです。

ミリポリのプロップガン?
いいえ、どう見ても本物です。

射撃オリンピック選手の警察官である主人公の英次(高倉健)が射撃場でミリポリを撃っている場面。
激しいリコイルによりランヤードリングが一瞬見えます。

ミリポリは本職による実射を手元のアップで撮影したシーンで始まりますが、その直後に健さんのシーンでMGCローマン4インチにすり替わっています。ただ、これは、よーく見てようやく気付くレベルです。
(ただよく見直してみるとグリップラインからハイパト改ミリポリorマスターピース風にも見えます)
もちろんこの作品は警察協力のもと本職の射撃シーンを撮影したそうですが、このような撮影方法は現在では無理(困難と思われる)なのだそうです。

聞いた話では「当たり前の話だが、日本の銃関連の法運用は厳しい。映画作品の一部として射撃シーンを使用した場合、本来の目的外で射撃したと見なされ違法と解釈されるリスクがある」とのこと。
所持許可を保有する俳優さんが自前の銃で射撃した場面であっても、フィクション作品に映像を流用した場合にスタッフが呼び出しを受けて厳重注意を受けたり、実射シーンがカットされたりした事例も結構あるそうで。

苦肉の策で未装填の銃を構えて手元のアップのみを撮影し、銃声を編集で足したりとか、射場は本物を使うが銃は電着銃を使うとか、アイディアと技術で何とかシーンを成立させているそうです。そういえばそんなシーンはいくつか思い浮かびます。。

駅Stationもこのシーンをカットせずに公開できたのは制作陣の努力と当時のご時世もあるのではないかと思います。もっとその昔は警察から本物を借用して使用してた、なんてエピソードはイラコバさんの映画記事にも紹介されていたのを覚えています。

カースタントなども最近では法令遵守が厳しくなってきていて、これは警察からのお咎めがあるというよりも視聴者クレームによる自主的な規制も多くなったみたいです。
銀行強盗の犯人がシートベルトをして信号を守り、黄線をはみ出ない、みたいなヘンテコなシーンがあるのはそういった事情があるそう。
つまり、過去から現代になるにつれて、色々なものがどんどん厳しくなってきたようなのです。

今ではCGやAIなど技術が進んでいるので、実写に拘わらなくてもリアルなシーンを作ることができるのかもしれませんね。
私はアナログな実写撮影の作品の方が好きですが、今のご時世は難しいのだと思います。。

西部警察やマッドポリスなんて、現代のコンプライアンスのレベルでは地上波では絶対放映できないような気がします。

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Posted by MGCMC at 19:05Comments(2)コクサイHWS旭工房

2024年11月20日

JP謎グリップ


"Kokusai M36 JP Custom"

コクサイM36モデルガンベースのチーフスペシャル JP(Japan Police)風カスタムです。
かなり昔に中古入手した外観カスタムとなります。

ベースは亜鉛合金製の金型共用となった初期の頃のヘビーウェイト樹脂製のようです。
カスタム箇所としては小判型サムピース、ランヤードリングの取付と刻印の打ち直し、ノーマルのプラグリップを加工したJP風カスタムグリップです。



実際の日本警察装備は謎に包まれているので、このような仕様が実在したのかは不明です。
本やネットで調べても、ほとんど情報を得ることはできませんでした。
グリップに関しては、過去のニュース報道写真・映像などでプラ製と思われるS&W非純正グリップを見た記憶はあります。

あくまで真偽不明の伝聞情報ですが、S&Wなど輸入装備の木製グリップが経年劣化や破損により交換が必要になった場合、国内の納入業者(ミネベアミツミ等)が独自に製造したプラスチック製グリップに換装する、という事例があるそうです。
過去の報道写真のおぼろげな記憶ではニューナンブに似た赤茶っぽくて独特なチェッカリングが入っていたと思います。
このカスタムグリップはその雰囲気を感じさせる、という加工を施されていますが、実際のデザインとは異なるようです。



特製のカスタムパーツにより、武骨な制式装備といった雰囲気が演出されています。
実在するとなると、3スクリュー・小判サムピースという4スクリューからの移行期の古い過渡期M36と推察します。

この形状のサムピースを「小判サムピース」「小判型サムピース」と呼ぶことが多かった記憶があります。
よく見ると小判型というより四角い感じなので、縞々模様(スリット状)が小判っぽいのかな?と思ったりもしますが、おそらくKフレームのミリタリーポリスは本当に小判型をしているので、そこが由来なのだと思います。


【参考】海外サイトで見つけた実物画像

(左)ミリタリーポリス
(右)チーフスペシャル

海外では"flat latch"または”flat thumbpiece"と呼ばれているようです。


HWS M36との比較。

HWS M36は1980年頃に発売された東京CMC製M36から金型を引き継いだハートフォードがリバイバル生産しているもので、プラスチック製モデルガンのM36としてはもっとも古い設計の部類に入ります。
古いながらも設計や外観のリアルさは現在でも通用する高いレベルのモデルガンですが、作動の渋さ、不確実さ、脆さという欠点があります。

かなり実物メカの構造、形状を再現した精密模型という印象があり、今でも色あせることのない魅力があるのは確かです。



このカスタムの元のコクサイ製はCMCよりも数年ほど後発でしたが、見た目よりも作動重視の設計となっていました。なのでコクサイとCMCでは同じモデルながら明確にキャラクターの違いがありました。
サイドプレートの分割ラインやパーツ形状など実物との違いがありましたが、その代わりに作動性能は良かったのでプロップガンとして用いられるのは、コクサイ製ベースであることが多かったです。

コクサイは一時期モデルガンの生産をパッタリと止めてしまったことがあるのですが、それでもチーフスペシャルだけは継続生産していたのが印象的です。
それだけ傑作モデルガンであり、需要もあったのではないでしょうか。


タナカ Pre M36との比較。

もっとも新しいモデルガンであるタナカのM36シリーズにも小判型チーフが製品化されています。
これは「ジョーカー・モデル」と呼ばれる米映画プロップガンを模した仕様で発売されました。
4スクリュー、スクエアバットでハンマー形状や刻印類などナンバリング以前のチーフスペシャルを見事に再現しています。

プラスチック製M36で小判型サムピースを再現したのはタナカが初めてなので、それ以前は自分で作るか、ショップで作ってもらうか、という方法しかなかったのでした。

そういった時代背景から、このカスタムを製作したショップ(人?)の情熱が込められている気がします。



タナカでは標準的に採用されている金属製サイドプレートですが、それまではあまり採用されてなかったと思います。
メーカー純正でプラスチック製、金属製の双方のラインナップがある場合は流用という形でプラに金属サイドプレートを取り付ける、なんてアレンジもありました。
CMC M36は流用可能でしたが、コクサイは生産時期によって部品形状が異なるため、流用可否の判断が難しかったです。
ショップからチューンアップパーツとして金属サイドプレートが発売されたりもしました。

重量増と剛性確保という利点もありつつ、プラと金属の素材の違いが見た目の一体感を失うという側面もありました。
このあたりは現在でも好みが分かれるところかと思います。


ニューナンブ改との比較

コクサイM60ベースのニューナンブ改です。初期タイプの51mm銃身をモチーフに外観カスタムされています。
ニューナンブM60は38スペシャル5連発DAでチーフを参考に国産リボルバーとして開発されたと言われています。
なので並べて見ると、かなりソックリであることが分かります。
実際には寸法や部品形状などだいぶ異なるそうですが、基本構造・構成はS&W Jフレームは同じように見えます。



JP装備はニューナンブが王道・本筋である、と言いたいところですが、現実世界での後継モデルは「S&W M37 チーフスペシャルエアウェイト」、「S&W M360J サクラ」と変遷しています。
つまり結局のところ、JP装備はS&W チーフスペシャル直系の子孫に引き継がれているというのが現状なのでした。

面白いのが、M360Jが「S&Wが作ったニューナンブ」みたいな見た目に行きついたところですかね。
日本人の体格や使用頻度や携行時の負担軽減など突き詰めていくと、同じ感じになっていくのかもしれません。

ニューナンブは既に生産中止から何年も経ち、順次引退・廃棄の道を辿っているとのことですが、一般人にはその状況を見とどけることはできません。
たまに専門雑誌で特集してほしいなーと思います。

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2024年11月13日

ナンノのデベル


"MGC M39 DEVEL CUSTOM"

デベルです。MGC M39ベースのカスタムです。
MGC最終期のHW樹脂モデルガンがベースとなっているようです。
かなり過去に中古で入手したため、製作者不明で詳細もわかりませんが、細部まで外観カスタマイズが行われています。

デベルカスタムとは1970年代に登場した実在のカスタムです。
私服で目立たずにハンドガンを携行する、いわゆるコンシールドキャリーは当時では作動確実な短銃身リボルバー(スナブノーズ)が主流でした。
よって、火力の高い9mmルガーや45ACPを使用するセミオートを携帯するという需要が少なく、S&Wやコルトなど大手メーカーでは該当製品がほとんどありませんでした。
そこでサードパーティのカスタムとして登場したのが、このデベルやASPでした。
これらが好評で市場の需要を認識したメーカーも火力の高いコンパクト・セミオートを続々と発売していきました。


ベースモデルのMGC M39HWは5ミリMGキャップ使用のCP-HWブローバックだったと思いますが、あらゆるパーツを切り詰めて強度が相当落ちてると思うので、発火には不向きです。
そもそも最初からデトネーターは付いていなかったので、ダミー仕様です。
ただ、マガジン等のサイズはそのままなのでリアルサイズ9mmダミーカートは入らないため、かろうじてMGCのオープンカートが使用できるといった感じです。



シルバー仕上げとなっていますが、経年劣化なのか曇りや剥げが出てきています。
MGCベースなのでストレートブローバックのままです。
デベルの特徴である窓あきグリップと残弾が見えるマガジンも再現されています。

これが約50年前のデザインとは思えないほど未来的に見えてきます。



日本においてデベルは専門誌で早い時期に紹介されていたので、有名なカスタムでした。
1980年代初頭からいくつかのショップカスタムとして発売されるなど人気のモデルだったと思います。
そしてついにプロップガンとしても登場したのでした。

フジテレビ系の刑事ドラマ『あいつがトラブル』(1989)は主人公の美咲令子(南野陽子)は何とデベルを装備していたのです。
バブル華やかな時代にピッタリでしたが、さすがにシルバーのカスタムオートを持つ、なんていうのはフィクションっぽいかな、なんて思っていました。
その何年もあとに同じフジテレビ系の『アンフェア』(2006)で主人公の雪平夏見(篠原涼子)もシルバーのS&W M3913を持って登場したのには驚きました。この時は「荒唐無稽な装備」ではなく、実際に日本警察で採用されていたので、むしろリアルな設定となっていたのでした。
その後のTBS系刑事ドラマ「ジョシデカ!-女子刑事-」(2007)では主人公の刑事くるみ(仲間由紀恵)がシルバーのSIG P230を使用しており、刑事が銀のプロップガンを持っていても気にならない時代になりました。
(さすがにP230シルバーは実際の装備には採用されてないと思いますが)
ちなみにジョシデカの脚本はアンフェアと同じ秦建日子氏、ガンエフェクトはビッグショットでプロップガン製作は旭工房と、いろんな繋がりを感じる作品ではありました。P230の発砲プロップはマルシンPPK/Sベースだったそうです。

結果的に『あいつがトラブル』の装備は未来を予言していた、みたいな感じになったのが驚きましたね。



南野陽子さんはサウスポーなのも相まって、プロップガンを構えるビジュアルが特徴的でした。
制作陣は撮影まで左撃ちだと知らなかったという逸話があるみたいです。
『スケバン刑事』時代のロングヘアからショートカットになったのも新鮮でした。

『傷だらけの天使』を知らないナンノと『スケバン刑事』を知らないショーケンのアクションドラマ

・・・こんな感じで紹介された『あいつがトラブル』は南野陽子、萩原健一、織田裕二、宍戸開、という豪華かつ濃いメインキャストのドラマでした。
刑事ドラマ「ベイシティ刑事」(1987)、Vシネマ「クライムハンター」(1989)シリーズのスタッフが大川監督始め、多く参画していることから、ベイシティ刑事の”マギー”(シルバーのナショナルマッチ)の系譜を感じることができます。
もちろんガンエフェクトはビッグショットが担当しており、デベルは旭工房が製作しました。放映当時に月刊Gun誌でも特集記事が掲載されたと記憶しています。
ただ、その他に資料となる情報が乏しく、この画像にある雑誌「隔月刊テレビジョンドラマ」くらいしか手元にありません。
確かVHSビデオソフトとして発売されたことはあったような気がしますが、DVDボックスなどの形態で発売されていなかったと思います。

そんなわずかな資料と記憶の情報しか紹介できないので、できればDVD/BD発売してほしい作品です。



旭工房製デベル(左)との比較。
こっちのデベルは以前『マルシン製ベースで加工途中のジャンク部品ほぼ1丁分』を旭工房で購入させていただいたものです。
ただ、内部パーツの一部とマガジンの中身が無い、くらいなもので、加工はほぼできている状態でした。
"DEVEL"ロゴはデカール状のものが貼られていたのですが、いつの間にか剥がれてなくなっていました。
念の為に旭工房製の金属の方のロゴも購入してあったのですが、何かもったいなくて貼ってません。

こうして並べて眺めてみると、当たり前ながら、やはり旭工房製が実プロップと似ていることがわかります。
旭工房の仲代氏によれば、撮影時はCPブローバックの発砲用の調子が良く、念のために準備した電着版は使わないままだったそうです。
電着版もどんな感じだったか気になりますね。
南野さんが左利きだと知らなかったのでトリガーガードの切り欠きを右用のまま作ってしまったのが残念だったとおっしゃっていました。



ノーマルサイズのM39との比較。
右はMGC製M39コンバットカスタムです。
ノーマルに比べデベルがどれだけコンパクトに加工されているか分かります。

M39コンバットカスタムというのはMGC純正カスタムでは珍しい部類かと思いますが、あまり人気が無くて生産数も少なかったそう。
その昔、上野のMGCサービス部でずっと売れ残っていた記憶があり、私はMGCイベントで本体のみを安く買いました。
やはりM59の方が人気が高かったのですかね。

ちなみに仕様はフレームのチェッカリング加工、木製グリップ、コンバットリアサイトという感じのライトなカスタムです。
M39ベースのメーカー純正カスタムはこれ以外はほとんどなかったものの、後に発売されたM59シューターワンカスタムやエアソフトガンM759カスタム等、MGCではSWセミオート系のカスタムはそれなりに多数製品化されました。それを考えるとM39は不遇モデルという印象が強いです。
ただ、M459モデルガンが製品化された際にスライドを丸ごと流用したM439が発売されたことはありました。

なお、M59、M39の金型はMGC廃業後にどのメーカーにも引き継がれなかったそうで、再生産の見込みはありません。なので大切に維持したいと思います。。



【参考】海外サイトでみつけた実物画像

デベルはサードパーティカスタムながら、生産期間も長く、生産数も多いようです。
『フルハウス』と呼ばれているものを多く見掛けますが、何がそう呼ばれてるのか等々、具体的な詳細仕様は特定できませんでした。
デベルは主に銃身長の短縮(前後方向の短縮)、装弾数の削減(上下方向の短縮)を基本仕様としており、携帯性を高めるための加工(突起となる部分の削除、丸め、サイズダウンなど)を行っているようです。
ベースモデルはS&W M39が主でM59もあるようです。
艶消しシルバー仕上げが主流ですが、稀に艶消しブラック仕上げも存在するようです。
製造時期や仕様によって加工箇所や形状などには多くのバリエーションが確認できます。
マガジンボトムは変形ピラミッド状の独特な形状をしています。

◆◆◆

デベルは今見てもカッコ良いモデルなので、マルシンのM39がセンター化されて再発売されたら、ぜひともデベル仕様に仕立てたいところですね。
腕が無いので無理だと思いますが、どこかのショップでカスタムされたものが出たら買ってしまうかもしれません。。

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2024年11月11日

LではなくてCです。ミリポリより


"HWS Military & Police Pre M10 2inch"

最近何度か取り上げている「ベイビーわるきゅーれ」シリーズは近代セミオートが活躍するイメージの作品ですが、テレビ連ドラ「水ドラ25 ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」では稀にクラシカルなプロップガンが登場します。

組織内で裏切り者を始末する「粛正さん」なる役割のエージェント、日野(柄本時生)がミリタリーポリス(ミリポリ)の2インチを使用しています。

この「日野仕様」は5スクリュー、テーパーバレルというオールドタイプのプレM10ミリポリで、ハートフォード(HWS)製のモデルガンをベースにしていると思われます。
ほぼHWSノーマルに近い仕様ですが、ハンマーがビクトリータイプからM19タイプのスパーを細くしたものに換装されています。

偶然ですが、私の手持ちHWSミリポリも似たような仕様になっています。
これは元のビクトリータイプのハンマーにクラックが入っていて、仕方なくCMC M19のハンマーを流用したものです。
どうせならフックタイプに整形したかったのですが、削るだけでは変身不可能ということがわかり、中途半端に削った状態で仕方なく取り付けています。



近年のモデルガンにおいてフックタイプハンマーはZEKEミリポリに採用されているのみで、あとは50年くらい前の国際産業の初代ミリポリ(亜鉛金属製)か六研ミリポリ(真鍮製)が採用しているくらいかと思います。
フックハンマー、独特な形状でカッコ良いんですが、あまり製品化されないのは採用モデルが少ないからでしょうか。。

2インチ、半月フロントサイト、スクエアバットという仕様のミリポリは映画「刑事ジョンブック 目撃者」で主人公ジョン刑事(ハリソンフォード)が使用していたのが有名で多くのファンがいると思います。
モデルガンでは国際産業改めコクサイのABS樹脂製メタルフィニッシュの製品が1983年に発売されました。
オールドタイプっぽくはあったものの、バレルがテーパーでなくストレートだったり、M19共用のためにカウンターボアードの長いシリンダーだったり、というミリポリでは実在しない仕様になっていたりもしましたが、私は発売当初からずっと好きなモデルガンです。

「太陽にほえろ!」ではマミー刑事(長谷直美)がメタルフィニッシュのまま使用し、非常に印象深いプロップガンでした。
ビッグショットの納富氏が月刊Gun誌の記事でミリポリ2インチが「お気に入り」というコメントがあったりしましたが、ニューナンブ風など、リアルなプロップガンの台頭により、ローマン以降の刑事制式プロップガンにはなり損ねた感はあります。



左:旭工房製、右:HWS製

その昔、コクサイM10では再現されていない部分をリアルにモディファイした旭工房製カスタムが発売されていました。
これはHWSが製品化するよりもずっと前の作品で、画像の個体は90年代後半から2000年代前半くらいの製作と記憶しています。
バレルの作り変え、5スクリュー化、刻印の打ち直し、シリンダー短縮、カウンターボア廃止、戦前タイプのサムピースなどシンプルな見た目ながら、かなり加工箇所の多い手の込んだカスタムとなっています。
旭工房製とHWSを比較してみると、かなり近い仕様であることがわかります。

ちなみにバレルの口径表記が"38 S&W SPC. CTG."と忠実に再現されているのも見逃せない点です。
『コクサイでは"SPL"となっている刻印、実は"SPC"が正解』というのは旭工房カスタムを手にして初めて知ったことです。




ミリポリの2インチというと、やはりこのイメージなのですかね。
イチローナガタ氏のコレクションではグリップ底部が角ばっているダイヤモンドセンターグリップにシルバーのテイラー製グリップアダプターという仕様があり、Gun誌やモデルガンチャレンジャー誌で紹介されていたことを覚えている方も多いでしょう。
コクサイのミリポリを製品化する際に設計担当の方が渡米し、イチロー氏のコレクションを取材したことは有名なので、メーカー標準のプラグリの形状など、氏の所有モデルと同じ仕様になっていたと推察します。



せっかくなのでコクサイのノーマルも並べてみましょう。
左から、コクサイノーマル、コクサイベース旭工房、HWSです。

コクサイのノーマルバレルは太くて野暮ったいなんて思ってましたが、こうして並べてみてみるとそこまで気になりません。
コクサイのミリポリは1983年に登場してから生産終了まで見た目、仕上げ、構造、材質など地道に改良されているので、細かいバージョン違いはたくさんあります。
画像の個体はメッキではなくABS樹脂に艶消し塗装した2世代目くらいの製品です。
末期の製品はシリンダーが短くなったり、カートリッジが内部発火式になって全長が伸びたりしているので、完成度は高いと思います。




【参考】海外サイトで見つけた実物画像
実物のはずなのですが、なんかモデルガンっぽい?感じですね。。
バレル刻印が"SPC"となっているのがわかります。

洋書やネットなどを調べるとグリップ形状は底部が角ばっているものと丸まっているもの双方が確認できますが、丸い方が少し多いのかな、という印象です。
ただ、実物の世界ではグリップは消耗品として交換頻度も高いと言われているので、オリジナルがどれくらいの比率で存在するのか、ということまでは分かりませんでした。

個人的にはどっちも好きです。2インチで角底でもイチロー効果で刷り込みされているせいか、カッコ良く見えるんですよね。。

近年の「あぶない刑事」ではユージ(柴田恭兵)がミリポリ2インチを使用していますが、やや最近のタイプ(とは言っても実物で古いものは60年くらい昔のものが存在)で薄いリブ付きバレルにラウンドバットとなっています。
秘匿性・携帯性という意味ではラウンドバットの方が有利なのだと思います。

いずれ、タナカからも古いタイプのミリポリが出てくれると嬉しいのですが、なんとなくHWSとタナカで住み分けができているような気もするので、製品化は難しいかもしれないですね。。

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Posted by MGCMC at 19:10Comments(0)コクサイHWS旭工房

2024年10月23日

クライムハンター・クラシックハンター


"Classic Hunter"

Vシネマ、通称Vシネとは「映画館で公開されない、テレビで放映されない、ビデオ専用の映像作品」です。
1989年に東映ビデオが初めてリリースした作品が「クライムハンター 怒りの銃弾」でした。

当時は大小さまざまなビデオレンタル店が全国各地にあり、ビデオ専用作品であったVシネは目玉商品となり高い人気を誇っていました。
現代におけるネットフリックス等の配信専用作品に近い感じで、テレビより制約が少なく、自由で挑戦的な作品も多い印象でした。
この時代、テレビの刑事ドラマは年々リアルさを重視し、人情物や組織内の対立などを取り上げることが多くなってきて、バンバン撃ちまくるアクション作品は徐々に減少していったという記憶があります。
かろうじて「あぶない刑事」(1986)、「もっとあぶない刑事」(1988)は視聴率20%前後の人気作品でしたが、以降は映画(関連のテレビ特番含む)に移行しました。

ガンマニア的には伝説とも言えるテレビドラマ「ベイシティ刑事」(1987)の視聴率は一桁の連続で、一度も10%を超えなかったそうです。
そんなベイシティ刑事の俳優、スタッフが再結集し、ガンアクションの見本となるような作品として構想されたのがVシネのクライムハンターと言われています。
おそらく不特定多数の視聴者層を狙うテレビではなく、視聴者が好んで選ぶメディアにターゲットを移したのでしょう。
Vシネは映画未満の低予算作品と思われがちですが、当時は邦画不況の時代で、Vシネと映画で予算はそこまで変わらなかったそうです。
最初は手弁当での制作も多かったようですが、Vシネが好評となりタイアップも増え、次第に予算も充実していったようです。Vシネならでは独特の作品も多く登場していき一つのジャンルとして確立しました。

初期のVシネの代表作であるクライムハンターシリーズは3作品あり、米LAのリトルトーキョーなる地が舞台となっていました。
主人公の刑事、ジョーカー(世良公則)が悪と対峙するアクション作品です。
個性的なキャストに個性的なプロップガンが用意され、ガンアクションは新鮮かつ迫力があり、非常に面白かったです。
市販モデルガンそのまま、というプロップガンはほとんど無く、グリップや仕上げの変更からフルスクラッチに至るまで様々なプロップガンが登場します。
「ガンアクションの見本市」をひとつのテーマとしていた部分がこういったところに表れていますね。
ガンエフェクトはビッグショットでVシネでは多くの作品を担当しており、プロップガン製作は2作目あたりから旭工房が本格的に携わるようになったそうです。

主人公ジョーカーはスズキ/ACG M92SBベースのベレッタM92SB-Fを愛用しており、これも当時としてはかなり新鮮でした。
そして、2作品目「裏切りの銃弾」でジョーカーがM29クラシックハンターを使用する場面が出てきます。

画像のモデルガンはその際に登場したプロップガンを模したコクサイのニューM29ベースのショップカスタムとなります。

実際の作品で使用されたプロップガンはMGCベースがメインだったようです。

クライムハンターに登場するプロップガンのレプリカ(モデルガン)は「エディースショップ」で製作販売され、好評だったようです。店内には実プロップガンの展示もあったりして、訪れた経験があるプロップガン好きの方々も多いのではないでしょうか。

プロップガンレプリカやニューナンブ改など、旭工房が得意とするカスタムがエディースショップのラインナップに似ていたので、当時はエディースショップが旭工房カスタムを売っているのかと思っていました。
後に聞いた話によると、一部のカスタムが旭工房製だったことは事実のようですが、ほとんどはエディースショップのスタッフによる製作で相当数のカスタムを量産していたそうです。
それだけ当時はカスタム製作の需要が多かったのですかね。


この個体は旭工房の手によるカスタムで製作はかなり古く、入手時期もかなり昔だったので記憶がおぼろげですが、おそらく1990年代前半から中盤の頃の製作品であると記憶しています。

ベースモデルは当時にコクサイで再生産されたABS樹脂製メタルフィニッシュのニューM29 6インチで、フロントサイトはコクサイの金属ニューM29AFから流用されています。

本体のメッキ剥離後にバレルアンダーラグの追加、フロントサイトの交換、フルートの穴埋めがされており、サファリランド製グリップが装着されています。
コクサイニューM29は実物のクラシックハンターと同じ6インチなので、サイズ感はピッタリ合致しています。
実プロップと同じMGCベースのものは持っていないのでわかりませんが、MGC だと6.5インチからのカスタムとなるので、先端をカットしているのか、そのままの長さなのかは不明です。

製作から数十年経過しているのでフルートを埋めた継ぎ目等がかすかに浮き出てきていますが、遠目には分からない程度のものです。かなりキッチリと埋め加工がされていたのだと思います。

ただ、久しぶりに動作確認しようとしたところ、シリンダーが全く回りませんでした。
これは当時のコクサイの持病というか特徴で、ある製造時期のヨークは金属劣化が激しく、劣化した箇所が膨れてシリンダーの回転を阻害してしまうのです。
無理やり回そうとするとシリンダーハンドやシリンダーストップなどが損傷する恐れがあり、最悪はフレームが破断する可能性もあります。
とはいえ修理方法は単純です。一回分解してヨークの膨れた部分を削り落とすのです。
(削った部分は地肌になるので、再仕上げ推奨)
今回ヨークを削ってシリンダーが回るようになりましたが、次はシリンダーストップの上がりが甘く、シリンダーが止まりづらいという現象が出てきてしまいました。
私はこの調整ができるほど器用ではないので、見なかったことにしました。。



クラシックハンターの特徴が集中しているマズル付近。
コクサイのAF(アジャスタブル・フロントサイト)は非常によくできていて、コクサイからクラシックハンターが出るのを楽しみにしていたファンは多かったと思います。
しかし、M29AF以降の採用モデルがほとんどありませんでした。

結局コクサイからクラシックハンターが出ることはなかったのですが、旭工房などショップカスタムでは人気でした。
旭工房の仲代氏によれば「とにかくすごいたくさん作った」とおっしゃっていたので、かなりの製作数があるかと思います。

ただ、M29ベースは加工の手間が多く、高価なので、「簡易型」ともいえる357バージョンもありました。
これはフォルムが似ているM586の6インチにAFを取り付けたカスタムで、こちらも多く製作されていたと思います。
私も最初はM586ベースを購入した記憶があります。



クラシックハンターカスタムは製作時期やカスタムのグレードによってAFの取付方法は何種類か存在を確認しています。
その種類はピン留め、ネジ留め、接着があるようです。
いずれも手加工での取付なので、簡単に取れてしまうようなことはありませんが、個人的にはピン留めがカッコ良いかな、と思っています。

この個体はピン留めのものです。


【参考画像】海外サイトより実物画像を探しました

クラシックハンターは国内専門誌でも取り上げられたこともあるので、実物の存在について検証する必要はないかな、と思いますが何となくネット検索して近い個体を探してみました。

調べてみた結果、かなりグリップや刻印などのバリエーションは確認できましたが、クライムハンターのプロップに近いのはこの年代のものだと思います。

グリップ他、ノンフルートシリンダーやワイドハンマーも同じですね。

のちに旭工房では、よりリアルなタナカM29ベースでもクラシックハンターを製作していました。
タナカからメーカー純正モデルとして発売してくれることを密に願っています。。。

私としてはクラシックハンターはクライムハンター以外であまり印象のないプロップガンという感じでしたが、とにかくインパクトがありました。
その昔、ビデオレンタルでガンアクション系のVシネを片っ端から借りて、何度も観ていた記憶が蘇りますねー。
多くの作品でエンドロールにMGCの文字が出てきて、それだけでも盛り上がっていた記憶があります。

また一作品ずつ見返していきたいです。。

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Posted by MGCMC at 18:29Comments(0)コクサイ旭工房

2024年10月11日

ナンブから生まれた小判チーフス


"Kokusai M36 Custom by Asahi Koubou"

M36 3インチ JP風カスタムです。
ABS樹脂製モデルガンのコクサイM60 2インチをベースに旭工房がカスタマイズしたものです。
英語表記では"Chief's Special"となるこのリボルバー、日本では「チーフスペシャル」「チーフス・スペシャル」「チーフス」「チーフ」とちょっとずつ異なる呼び方が普及しており、基本的にどの呼び方でも通じると思います。
今回はチーフスで統一しましょう。

今回メインで取り上げる旭工房M36 3インチですが、かなり凝ったカスタムとなっています。
小判型サムピース、4スクリューのスクエアバットという古い時代のチーフスです。ランヤードリング装着といった外観カスタマイズが施されています。これは昭和時代の日本警察装備をイメージしたものとなっています。
ニューナンブを始めとしたカスタムを得意としていた旭工房らしい仕上がりです。


一見、ノーマル然としたモデルガンに見えますが、ニューナンブ製作から得た旭工房のノウハウがふんだんに詰め込まれたフルカスタムとなっています。
製作された当時、コクサイでは3インチはもちろん、M36自体が製造中止になっていた時期で、唯一継続生産されていたシルバーのM60 2インチをベースにしていました。これはタカのボディーガードプロップも同じで、ネジ類はシルバーのものを黒染めしたものが使用されていたりします。

旭工房ではニューナンブやボディガードを製作する際、シルバーのメッキ落としや黒染めという本来M36があれば不要だった手間を掛ける必要があって大変だったと思います。。

ただ、M60 2インチをベースにバレルやフレームを加工してニューナンブ77mmに仕立てる、という経験と実績があって、このチーフス3インチが製作されている、というのがチョット不思議な感じで面白いですね。
とにかく一見ノーマル風に見えるこのモデルを作り上げるのは、かなり労力が必要ということです。

モチーフとしては「昭和30年代~40年代に日本に輸入された警察用装備」といった感じのチーフス3インチです。

・バレル、エジェクターロッドの新規作成
・4スクリュー化
・小判型サムピース
・スクエアバット化
・ランヤードリング取付
・フル刻印

コクサイM60 2インチでも最初期のものをベースとしているため、サイドプレートの分割ラインが実物どおりではありませんが、そこは無加工のままとなっています。
それ以外の部分はかなりリアルに仕上がっているのではないでしょうか。



CMCやコクサイでもチーフス3インチは製品化されていましたが、双方ともヘビーバレル仕様でした。
旭工房カスタムでは細いバレルでリブも狭く、フロントサイトも長めのものが付いています。
なので、かなりスリムな印象を受けます。



こちらも特徴的なランヤードリング。スクエアバット化された後、フレーム後方に取り付けられています。
平成時代(新制服に切り替わってすぐの頃)のホルスターは上蓋の隙間からグリップエンドが見えていたのを覚えている方も多いと思いますが、スクエアのチーフス装備の場合はこんな感じのランヤードリングがついていたのを見たことがあります。

なんでこんなハジっこに付けてるのかなーと疑問に思っていました。

製造元は忘れてしまいましたが(新橋銃砲玩具店かバクレツパイナップルあたり?)、ラウンドのチーフスをスクエアに変身させるキットが販売されていたことがあります。それにもランヤードリングが付いていたのですが、これと同様に後ろ側に付いていた記憶があります。

日本のスクエアチーフといったらランヤードリングは後ろ寄り!という印象はマニア間では共通認識なのかも。



もう一つの旭工房チーフスとの比較。
これはコクサイから一時期再生産されたABS樹脂製のM36 3インチをベースにスクエアバット化し、実物グリップを取り付けたものです。フレーム底部はフラットでランヤードリングは付いていません。
入手経緯としてはニューMGC新宿店にて1990年代に新品購入したものです。

なぜ?MGC?という疑問はあるかもしれませんが、この当時はニューMGCでは輸入グリップや他メーカー製品を積極的に販売していた時期でした。
その中で「ニューMGCオリジナルカスタム」として店舗限定で他メーカーのカスタム品を少数販売していたのです。
これらは旭工房が外注として加工を請け負っていたものがあり、このスクエアカスタムはそのひとつです。
よって、公式には「旭工房製作」とはどこにも書いてないし、刻印があるわけでも無いので、証明することはできないのですが、過去に「むかしMGCで働いてたよしみで仕事を引き受けていた」とお伺いしたので間違いないかと思います。
ガバ系のカスタムパーツ取付加工みたいのも結構行っていたそうです。

ちなみに当時ニューMGCで売っていたM36は初期型の再生産版で、表面メッキは省略され、艶消しブラックの塗装仕上げ、パッケージは白い上蓋に「M36」と印字してある簡略的なものでした。
前述のM60 2インチのみ生産の時代から、バブル景気もあって絶版モデルガンがプレミア価格で中古流通するようになった頃にコクサイがモデルガンの既製品を不定期に再生産するようになり、それがニューMGCなどショップで販売されたと記憶しています。



私は昔から3インチのチーフが好きだったので、ニューMGCでコクサイ再生産のノーマル(ラウンド3インチ)と、このスクエアカスタムの2丁を購入しました。価格は覚えていないですが、そんなに高くは無かったと思います。
当時は輸入グリップも大量に出回っていたせいか、円高だったこともあって価格もお手頃でした。

こうして並べてみるとバレル周りの印象がだいぶ異なることが分かります。

あの時いっしょに買ったノーマルのラウンドM36はどこへ行ったのかなー、と記憶をたどっていくと、ヨーク付近にクラックが入り、捨ててしまったことを思い出しました。
コクサイのエキストラクターロッドは正ネジなので緩みやすく、緩んだ状態で作動し続けると、フレームにストレスが掛かり崩壊する、という事が稀にあるのです。
特に初期M36/M60(ABS樹脂モデル)は安全対策のためか、ヨークカット付近がギリギリまで肉抜きされているので、もっとも脆弱な部分かもしれません。

その後に樹脂モデルも亜鉛金属モデル用の金型を共用して生産されるようになってからは肉抜き部分が無くなり強度問題は解消されたかと思います。ただ、初期モデルに限らずコクサイモデルガンのロッド緩みには常に注意しておく必要があります。
フレーム崩壊は稀な事象かと思いますが、ロッドが緩んだままだと回転不良やスイングアウトができなくなったりすることがあります。

おそらく強いストレスをフレームに与える原因として、「強引にシリンダーを叩いてスイングアウトさせる」というケースがあるのではないかな、と思います。
スイングアウトするとき、強引に叩くクセがある方っていますよね。。私もですが。。。おそらく動作が渋いモデルガンに慣れてしまうとついてしまうクセです。
私の経験談だとCMC M36は新品で買ったときから渋くて(逆ネジなのに。。)、思いっきり叩いてスイングアウトしてました。。MGC44マグナムもそうだったなー、なんて今思うと、ちゃんと調整の技術を身に着けていなかったのが良くなかったと思います。
今のタナカのモデルガンとかスムーズで驚きます。



旭工房カスタムとコクサイ純正のバレル太さとリブ形状の違い。
どちらも実物に存在するバリエーションなので、どっちが正しい、ということはありません。

最近になって発売されたタナカは細い方を再現しているので、いずれ比較をしてみたいと思います。

では旭工房のフルカスタムにソックリな本物は存在するのか、というところを掘り下げてみます。
ネット検索すると白黒写真の古いニュースが見つかりました。


【参考画像】これは時事通信ニュースに載っていた昭和時代の本物です。
https://www.jiji.com/jc/d2?p=fas001-05535554&d=005news
不鮮明な写真ですが、上がチーフスで下がニューナンブであることが分かります。
うーん、チーフスは細くてニューナンブの方が大きくて太い、という勝手な印象を持っていましたが、こうして並んでいるのを見ると、そんな差が無い気もしますね。。ホルスターは共通で使用可能とも聞きますし、サイズの違いはわずかなのかもしれません。

チーフスの方は小判型なので年代的にはすごく古いと感じてしまいますが、1974年のニュース画像なので当時の人が見たら骨董品的なレベルで古い感じはなく、ちょっと古いくらいの感じだったのですかね。
画像では右側が見えないので4スクリューモデルかはわかりませんが、特徴的な取付位置のランヤードリングも確認できます。
旭工房カスタムが非常に似ていて、本物の仕様に肉薄していることが分かります。
どうやって仕様を取材したのでしょうか。。すごいですね。。

さて、なぜ日本警察仕様のチーフスはこのようなランヤードリングなのでしょうか。


これは10年くらい前にマラソン見学か何かの折に沿道から撮影した際に写っていたものです。
M37かな?とも思いつつも、思いっきり引き延ばしてみたら、フレーム下部がラウンドにしては長い感じもするので、何となくスクエアチーフのように見える気がします。これは噂の小判チーフスなのか??
がんばって見てみるもグリップは何か経年で黒ずんだ木??あるいはゴムかベークライトの社外品??で年代どころか型式も特定は困難です。
ランヤードリングの軸がギリギリ後ろ寄りの方に取り付けられていることはわかりましたが、やはりこれでは様子がサッパリわかりませんね。。。

ソース不明な説ですが「輸入後に国内でランヤードリングを取り付ける際に本国のシリアル打刻を避けるために後ろ寄りに穴を開けた」というのを聞いたことがあります。

では困ったときにはネット検索で何かヒントを探してみましょう。


【参考画像】ネット検索で見つけた本物の小判チーフスです。

まず、チーフス本体の画像。カタログ写真?なのか不明ですが、すごく綺麗です。
年代的にはこれが近い気がします。
残念ながらランヤードリングがついているものは本国のサイトでは見つけることができませんでした。
やはり国内に入ってから取り付けた説が有力です。

つまり、アメリカから輸入した時は製造時のままで、国内の警察装備を整備する業者がランヤードリングを取り付けた、と推察します。


【参考画像】ネット検索で見つけた本物チーフスのシリアル打刻です。

確かにこうして見てみると、やや前よりに打刻があり、ランヤードリングを取り付けるなら後ろ寄りにせざるを得ないというか。。
ただ、同年代のチーフスでも真ん中に打刻があるものもあったりするので、日本が輸入した年代の個体がどのような感じになっているのか、までは調べることはできませんでした。

「シリアルを避けて後ろにランヤードリングを取り付けた」というのは説としては納得感があるものの、立証は難しいので、あくまで都市伝説と考えておいた方が良いかもしれませんね。。



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Posted by MGCMC at 18:36Comments(2)コクサイ旭工房

2024年07月17日

トルパイ?トルパイソン?トルーソン?



"Python Custom modified from MGC Trooper"

MGC製のリボルバー型プラスチック(ABS樹脂)モデルガンは意外と少なく、纏めると4種となります。

・1972年 Nフレーム(ハイパト41&44マグナム):業界初のプラスチックリボルバー
・1975年 MK3(ローマン&トルーパー):MGCプラスチックリボルバー第2弾
・1977年 パイソン:MGCプラスチックリボルバー第3弾
・1983年 Lフレーム(M586&M686):シューターワン対応の新規設計リボルバー

発売順で並べてみると、こんな感じです。

歴代すべてプロップガンとして活躍していて、刑事ドラマでは警察装備として当たり前のように登場していました。ちなみに実際にはどれも警察装備としては採用されていないところも何かすごいポイントです。

名作ドラマ「あぶない刑事」の2シーズン目となる「もっとあぶない刑事」ではタカ(舘ひろし)がM586をユージ(柴田恭兵)がパイソンを装備していました。

今回はユージのパイソンに使われた謎カスタム「トルパイ」について少し取り上げます。
「あぶない刑事」ではガンエフェクト担当はBIG SHOTでプロップガン製作は主に旭工房であることが有名です。

詳細は「ホームページ版 「あぶない刑事」 特集」でも取り上げているのでそちらもご覧ください。
http://mgcmc.blue.coocan.jp/abudeka.html

ユージのパイソンはMGCパイソン2.5インチにコルト製の実物グリップを取り付けたものがメインのプロップガンで、これがいわゆる「設定銃」となります。「発砲銃」はMGCトルーパーをパイソン風に外観加工した通称「トルパイ」が使われています。「トルパイソン」「トルーソン」という呼び名もあるようですね。
同じコルト系リボルバーであるものの、トルーパーからパイソンに変身させるには加工が必須で、バレルやグリップの整形など実際に加工するとなると大変手間が掛かります。さらに発砲銃では撮影時の激しい発火アクションに耐えなければならず、丈夫かつ安全な造りも要求されます。

外装を切った貼ったして作られたカスタムはノーマルモデルガンよりも脆弱になるのが一般的ですので、ホルスターの出し入れだけでも気を遣うようなものが多いと思います。そんな弱点を克服し、トルパイは「あぶない刑事」で大活躍しました。




なぜ発砲銃はMGCパイソンをそのまま使用しなかったのでしょうか。
冒頭でも列記しましたが、MGCトルーパーよりMGCパイソンの方が後発であり、順当に考えると新しい方が見た目もアクションも良くなっているはずです。特にMGCのモデルガンというと確実な作動で有名だったので、その傾向は顕著だったと記憶しています。
しかしなぜかMGCパイソンはシリンダーの回転不良や内部メカの固着などの事象が出やすく、作動性はトルーパーよりも低いということは事実かと思います。





トルパイとMGCパイソンSRHWを並べてみました。

コルトDAリボルバーの構造が「頑丈な鋼鉄フレームで作動するように設計されている」ことで成り立っているいます。これをモチーフとして「プラスチックと柔らかい金属という制約で安全性を確保しつつアクションも成立させる」というモデルガン独特の事情がパイソン不調原因のひとつと考えられます。「小林メカ」といわれるMGC設計担当のタニコバ氏が大胆なアレンジをしてパイソンを作ったものの、それでも弱点は克服しきれなかった、というのが当時(1977年)の技術・コストの限界だったではないでしょうか。

現在、パイソンのモデルガンを発売しているタナカでも現行は「Rモデル」という改良型でようやく確実な作動に到達したことを考えると、快調なパイソンの実現には30年くらいの歳月が必要だったとも言えます。

旭工房の仲代氏によればトルパイはユージ用の2.5インチの他、トオル用の4インチや他作品のキングコブラなど同様のカスタムを非常にたくさん製作したそうです。
なのでグリップも雑誌記事等で取り上げられたプラスチックのスクエアをパイソン風にメダリオン付近を加工したものだけでなく、木製やラウンドもあったとのこと。
それだけMGCローマン・トルーパーのアクションが確実で重宝されていたか、ということがわかるというものですね。

この個体も旭工房製かは分かりませんがシングル、ダブルとも確実に作動し現役感?があります。見た目はだいぶ荒れてきているので、いずれ綺麗にしたいと思っています。




ラストは最新作「帰ってきたあぶない刑事」の正規ライセンス製品であるタナカのユージモデルと並べてみました。
ユージ役の柴田恭兵氏はプロップガン自体にこだわりは特にないというのが有名ですが、一貫してスナブノーズを使用しているので、そのイメージはあります。

「もっともあぶない刑事」は1988年放映開始の作品ですが、当時に現代のモデルガンがあったら何が採用されていたのか妄想するのも楽しいです。
タナカのパイソンRモデルがあったら採用されていたかもしれませんね。

そういえばビッグショットの納富氏も旭工房の仲代氏もMGCに勤めていたのですよね。当時は業界最大手だったMGCも今は無くなり、長物のストック等を作っていた田中木工所が正式公認モデルを発売してるなんて、誰も想像できなかった未来になってると思います。
そんな中でもずっと続いている「あぶない刑事」は偉大すぎます。。

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2024年04月02日

ハイパト41改M28ハイパト



"M28 Custom by Asahi Kobou"

タナカM28を入手し、前回はコクサイと比較してみました。その際に珍しい旭工房製カスタムを見つけたので紹介します。

これは旭工房の仲代氏が個人的な趣味としてMGCハイパト41改をいくつか製作していた中のひとつです。
もともと昭和のプロップガンが好きで中でもMGCハイパト41がかなり好きだったそうです。
一時期かなりハイパトを集めていたそうで、その中でも程度が良くない個体をベースにカスタムを製作したとのことでした。
確かに今でも酷使された再生困難な中古のハイパトは良く見掛けますね。。
技術力があれば、こうした変身が実現できるのが羨ましいです。残念ながら私にその腕はありません。。

このカスタムは口径はそのままで「架空モデル ハイパト41を現実モデル M28ハイパトにしてみた」という感じの仕様です。
0.5インチのバレル延長に合わせてフロントサイトとリブの整形、金属製Kサイトの取付が主なカスタム箇所です。

あとはMGCノーマルのままですが、かなりリアルなM28になっているのがすごいですね。




タナカ、コクサイと並べてみても、引けは取らない仕上がりです。
個人的なカスタムとはいえ、しっかりと作りこまれ旭工房らしい感じがします。
旭工房は「発火に耐えうるカスタム」というのがポリシーだったそうで、その考えはJAC/バベルの伝説ガンスミス中村氏から影響を受けたそう。
とは言っても、もったいなくてこのハイパトを発火したことは一回もないです。。




こうして見ると4インチバレルもカッコ良いですね。
個人的にはハイパトの3.5インチがもっともカッコ良いと思っているのですが、そこはそれぞれの好みなので4インチも好きです。

M28の4インチが映画やドラマで活躍した記憶はほとんどなく、おぼろげな記憶では太陽にほえろ!のスコッチ最終話「スコッチよ静かに眠れ」と月刊Gun誌でトビー門口氏の記事で登場した「アメリカの女性警官が来日」という内容で準備したプロップガン?くらいです。

そういえば「M28はハイウェイパトロールマンって名前だが実際のハイウェイパトロールマンはほとんど使っていない」みたいな記事もあったような気がします。
現実的に考えるとKフレームのM19コンバットマグナムの方が実用的なのですかね。




タナカには亜鉛金属製サイドプレートが採用され、重量アップと高級感アップに貢献しています。
昭和のモデルガンではサイドプレートはフレームと同じABS樹脂が採用されることは当たり前でした。
当時、ABS樹脂モデル、亜鉛金属モデルをラインナップしていたモデルガンはサイドプレートの互換性があったりもしたので、設計技術やコストの問題ではなく、見た目の統一感や安全対策を優先していたと推測します。
近年、金属製サイドプレートが採用されるようになったのはシャーシ構造などで強度を落として安全対策を施していることもあると思います。

MGCハイパトはヨークの表面をABS樹脂で包むという凝った構造になっていることから、表面を同じ素材で統一するということに並々ならぬこだわりを感じます。
ただその構造は後発製品のローマンやパイソンで引き継がれることはなく、他メーカーでもヨーク(クレーン)は亜鉛合金で製作することが主流となりました。

古き良き時代のリボルバーは良いですね。
個人的にはピースメーカーよりもS&WのDAリボルバーの方が「懐かしい」と思ってしまいます。
80年代は現役バリバリだったはずですが、それも40年前ということです。時の流れは速いです。

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2023年01月03日

発掘:旭工房マスターピース



"M15 Custom by Asahi Kobou"

おや?これはタナカのM15コンバットマスターピース?
いいえ。HWS M19ベースの旭工房製のカスタムです。

1990年代後半から2000年代あたり。
実銃はグロック等のポリマーフレームが主流となり、輝くブルーのリボルバーは過去のものとなりつつありました。
モデルガンメーカーも相次ぎ廃業し、新製品も少ない頃でした。そんな中ハートフォード(HWS)やクラフトアップル(CAW)がCMCやMGCの廃番製品金型を受け継ぎ、細々と販売していました。

HWSはM19のシュラウド部分のみ切り取った「マスターピース風カスタム」を販売したりしてました。
私も4インチを買ってみましたが、何か変。。と思ったら実物はテーパーバレルでリブも細いのですよね。
バレル部分がM19のままだとどうしてもバランスがおかしくなるのです。
モデルガン低迷の中、新規モデルを販売されたHWSには多大な感謝をしつつも「ちゃんとしたマスターピースが欲しいなぁ」と思っていました。

そんな身勝手なマニア的な要望に果敢に取り組んでいたのが旭工房です。
ご存じのとおりガンエフェクトでおなじみのビッグショットの多くのプロップガン製作に携わった仲代氏の主宰する工房で、古くはエディスショップやニューMGC、アンクル、新橋銃砲玩具店などにオリジナルカスタムを卸していました。

旭工房ではバレルなど一部分の原型製作を行い、それを模り複製したものを既成モデルガンと組み合わせて新たなモデルを作り出す、というコストパフォーマンスも重視したカスタムを得意としていました。

もっとも有名な作品(カスタム)はニューナンブM60で、コクサイチーフに複製パーツを取り付け加工して見事に変身させていました。これはプロップガンでの活躍はもちろん、市販カスタムとしてもヒットしたのではないかと思います。





そんな旭工房カスタムでも個人的に傑作だと思っているのが、このマスターピース改です。
テーパーバレルと細いリブが見事に再現されています。
シリンダーも輪切り加工で357サイズから38サイズに全長を詰められ、カウンターボアも削除されています。
この面倒な加工は改造防止のインサートを残すためで、旭工房の安全意識の高さの現れでもあります。
このような細かいカスタマイズが集まって違和感のない素晴らしいルックスに仕上がっています。
まさにマスターピースですね。

現在では最初からリアルに完成されたタナカのM15モデルガンが発売されていますが、そんな製品が発売されるとは夢にも思わなかった時代に作り上げられた執念のカスタムと言えます。

当時、旭工房カスタムに入れ込んで、いくつか入手していたので今後紹介できるものがあれば取り上げていきます。残念ながら、やむにやまれぬ事情で手放してしまったものもいくつかありますが、画像だけ残っているものなども想い出補正つきで紹介していこうと思います。


◆◆◆

「発掘」シリーズとは
かつて載せていたブログが全削除となった件について、過去画像がいくつか見つかったので不定期で少し紹介します。
どういうテーマで取り上げ、何を書いたか本人もさっぱり忘れている上、既に手放してしまったり、お借りして撮ったものもあるので、簡単な紹介に留めます。
なので、記憶が曖昧で細かな内容に誤りがあるかもしれないので、その点はご了承ください。


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Posted by MGCMC at 02:04Comments(0)HWS旭工房