2024年11月22日
ローマンは何丁あっても良いですからね
"MGC & CAW LAWMAN 2inch"
クラフトアップル(CAW)から久々にMGCローマンのリバイバルが発売されましたが、約100丁程度の生産数ということもあって即完売となってしまいました。
私は最初その情報を知らず、友人から「売り切れ必至」と聞き、急いで確認したところ値引き販売しているショップは全て売り切れ。定価販売のショップに1丁のみ在庫があるというので、勢いで購入してしまいました。
「むかし5000円で売ってたローマンを3万円で買うのか。。」という、単に自分のフトコロ事情が良くないことを棚に上げてボヤきつつも、やはり買ってしまうんですよね。。
毎回資金が足りず、やむなく手持ちのコレクションを処分して購入しているような、自転車操業?の私にとって、最近のモデルガン価格はかなりダメージを受けます。
それでも、買うのをやめてしまうと、メーカーはモデルガンを作ってくれなくなりそうで、なんとか資金調達してがんばってます。
やっぱり新品で買うのは気持ち良いですからね。
MGCローマンの発売は1975年。モデルガンのエントリーモデルとして長らく発売されていた傑作モデルガンで、安さ、丈夫さ、動作の確実さ、が全て素晴らしいので愛好家はもちろん、プロップガンとしても活躍したのは多くの方がご存じかと思います。
画像の個体は「あぶない刑事」のユージ(柴田恭兵)の劇中仕様をイメージしてABSローマンに木製グリップを装着したものです。
まず、ABSのMGCローマンについて書きます。
子供の頃、私が初めてローマンを買ったのはMGC渋谷本店でした。
ファイアーセールなる特売期間に3割引だったのを覚えています。
既にシュラウド付きのニューローマンが売っていた気がしますが、迷わず旧ローマンを買いました。
(本当はドックと同じシルバーフレームM59が欲しかったのですが、高くて断念。かなり後に購入。。)
当時の渋谷本店には「太陽にほえろ!」のスコッチ刑事(沖雅也)がローマン2インチを、ロッキー刑事(木之元亮)が4インチを持っている大きな白黒のスチール写真パネルが飾られており、これがとても格好良かったのです。
(おそらく第274話「帰ってきたスコッチ刑事」の1シーン)
MGCのすごいところは旧ローマンをずーーっと売っていたことです。
これはプロップガンとしての需要があったのも一因だと思いますが、勝手な推測ではニューローマンより旧ローマンの方が売れていたのでは無いかと思ってます。
なのでローマンを買ってバカスカ発火して、ボロボロになって、またローマンを買う、なんて感じで数丁は買った記憶があります。
最初のは大きい文字のSPG刻印で、プラスネジ。その次は小さい文字のSPG刻印でマイナスネジ、といった感じでちょいちょい改良されていました。
画像の個体もその2種類となっています。
パッケージ(箱)も上蓋のデザインは同じながら、生産時期に違いが見られます。
画像にはありませんが、もっとも初期の下箱は発泡スチロールに起毛風の加工が施されていました。
かなり長い期間製造されていたことが箱からも分かります。
その後、ニューローマンは組立キットが発売され、さらにヘビーウェイト樹脂版も発売。
いよいよ旧ローマンは絶版か。。と思っていたら「ローマン・クラシック」を名乗り、ヘビーウェイトで再登場しました。
上がCAW、下がMGC(HW)です。
ヘビーウェイト樹脂(HW)のMGCローマンはMGC末期の製品です。
この時代はエアソフトガンブームによりモデルガン人気が下火になっていた頃ですが、バブル景気のあたりだったこともあったのと、MGC自体は「市場ニーズがあるのでエアソフトガンは作ってるが、ウチはモデルガンメーカーだ」というプライドがあった感じなので(社名にモデルガンって入ってるし)、ローマンクラシックはバレルもリアル刻印になり、トリガー&ハンマーの仕上げも綺麗になって登場したのでした。
「ローマン・クラシック」という名前はこの辺りから普通に使われるようになったと思います。
CAWローマンはクラフトアップル系列のマイズファクトリーが生産しています。製品仕様はMGC時代と大きく変わりありませんが、リアルな刻印になっているのが特徴です。
作動は最初は若干渋い感じがありますが、これはCAW製品の特徴という感じもします。
法律や規制によって柔らかい金属(亜鉛合金)を多用しているので、購入後の摩耗に余裕を持たせるためなのではないか、と理解しています。
MGC時代は製造組立後に工場内で入念な作動調整を実施していたと聞くので、「箱出しで調子良いのがMGC」という評判と名声を得たと思います。
当時は直営店・通販で修理や交換部品販売などが充実していたから、という背景もあったのではないでしょうか。
その昔、モデルガンには豊富なアクセサリー類が準備されていて、様々なドレスアップを楽しむことができました。
木製グリップ、サイレンサー、ホルスターというのは現在でも定番アクセサリーなのですが、当時はとても安価だったのが印象的です。
中には数百円で売っていた木製グリップもあったほどです。ただ、現在ほどは形状や加工がちゃんとしてないのも当たり前で、ローマンのグリップも初期のものは実物とはかけ離れたデザインをしてた上、取り付けてもカタカタと固定が甘かったり、フレームからはみ出たり、寸足らずだったり、みたいな感じのものがたくさんありました。
ただ、とても安かったので、そこは仕方ないと割り切るというか、当時はそういうものだ、と思ってました。
器用なマニアはキッチリと修正して格好良く仕上げていたと思います。
そんな感じの時代だったのでJACとかで売っている今よりドル高の時代の高価な輸入グリップに憧れたりしたものです。
今では日本製の木製グリップの方が実物より出来が良いなんて評判もあるほどなので、変な形のカタカタグリップはもはや過去のものですね。
MGCも後期のニューMGC名義のアクセサリーは完璧な形状、フィッティングの素晴らしい木製グリップとなっていました。
なので長年に渡り、買っては壊し、買い直す、買い足す、手放す、なんてことを続けていたら、いくつかの木製グリップが手元に残りました。。どれも想い出があり、ヘタクソな加工をして台無しになってる部分もあったりしていながらも捨てられずに保存しています。
MGCの先見性というかすごいところ。この時代にバーコードによる商品管理をしていたことです。
もちろんバーコードというのはMGCが開発したものでは無いのですが、当時はまだ工場や小売店でもそんなに普及していなかったと思います。
当時は何も理解していませんでしたが、大人になって改めていろいろ見直してみると、新発見がありますね。
◆◆◆
さて、CAWローマンは何が違うのか??買う価値はあるのか??と自問自答したときに、もっとも気になったのがバレル周りのディテールアップでした。
そこでその辺りの比較をしてみましょう。
《バレルの比較》:上からMGC(ABS),MGC(HW),CAW
《バレル刻印の比較》:上からMGC(ABS),MGC(HW),CAW
MGC時代、ABS⇒HWになったところで既に刻印はリアル化されています。CAWはMGCとは異なる後入れ刻印ながら、それを引き継いでいる感じです。エジェクターロッド周りなども洗練されており、CAWは「MGCローマンクラシック(HW)のリバイバル」として素晴らしいモデルガンであることは間違いありません。
価格的にはだいぶ上がってしまったのが痛く感じますが、時代も事情も違うので比較してもあまり意味が無いかと思います。
◆◆◆
ところで、本当に現行CAWローマンは高いのか、もうちょっと考察してみることにします。
統計で発表されている大学初任給とローマン定価から割り出した「ローマン割合」を計算してみましょう。
MGCローマンが発売された1975年の大卒初任給と比べてみます。
・大卒初任給 :89300円
・タクシー初乗り : 280円
・たばこ(ハイライト): 80円
・MGCローマン : 5000円
・ローマン割合 : 5.6%
私が初めて買ったのは1982年頃だと思うのでその年も見てみます。
(子供だったので働いてませんが)
・大卒初任給 :127200円
・タクシー初乗り : 430円
・たばこ(ハイライト): 150円
・MGCローマン : 5000円
・ローマン割合 : 3.9%
ちなみに私はファイアーセールで3割引き3500円で買いました。。
そして現在(2024年)になるとこんな感じに。
・大卒初任給 :226341円
・タクシー初乗り : 420円
・たばこ(ハイライト): 520円
・CAWローマン : 31680円(税込定価)
・ローマン割合 : 14.0%
やはり、高いですね。。
1975年当時の割合(5.6%)だと定価12675円くらいになります。
だからと言って、モデルガンの価格が不当に高いかというとそうでは無いと思います。
現在の様々な物価高は原油、原料、流通、人件費の高騰等、様々な原因があります。
そしてモデルガンに関しては、当時と圧倒的に生産数が違う、という点もあります。
MGC時代は何万丁とモデルガンが売れていたそうですから、設計コストの回収や工場での大規模生産を考えても薄利多売で利益を得られたと思います。
100丁くらいの生産では対抗するのは難しいので、少しでも利益を得て赤字を出さないためには価格が上がってしまうのは仕方ないのではないかと考えられます。
そんな状況でモデルガンを購入し続けるのは大変なことですが、誰でも少しは趣味を持ったり、ちょっとした贅沢をしないと、、なんて自分の中で言い訳しながら買ってます。
◆◆◆
プロップガンとしてのローマンは発売時からすぐに活躍し、映画・ドラマでは警察制式装備として採用されているかのごとく、あらゆる場面で登場していました。
現在の作品でも見かけるほど、長きに渡って活躍しています。
その昔、MGCはプロップガン(当時はステージガン)をメーカーとして制作会社に提供していました。
これはMGCの機関誌記事からの引用ですが、「リボルバーのみ提供」とあるので、ハイパトやローマンを指すのだと思います。
1972年登場のハイパト(ハイウェイパトロールマン41)は1971年の銃刀法改正の直後に登場したMGC製モデルガンです。当時は「(電着を除いて)唯一の合法プロップガン」といった感じの位置づけだったので、銃撃シーンはハイパトばかり、という時代がありました。
1975年登場のローマンはシュラウド無し・固定サイトというオーソドックスなスタイルが警察装備として注目され、「刑事は2インチ、制服は4インチ」という定番プロップガンとして普及しました。
銃火器類をマニアックに凝った一部作品を除いて、警察装備はローマンで固める、という時代が長く続くことになったのでした。
実際の装備としても採用されているCMCチーフや国際ミリポリが後に発売された後もローマンの天下は続くことになります。これは小林メカ、と言われるMGC(当時)のタニコバさんの設計による丈夫で確実なアクションがローマンの基本性能が非常に高かったことが要因だと思います。
ローマンベースのニューナンブ風プロップやCRS風プロップなども製作されました。
太陽にほえろ!第217話「スコッチ刑事登場!」(1976年)より。
この前話までは前任のテキサス刑事(勝野洋)はじめ、刑事たちはMGCハイパト41あるいはハイパトベースのカスタムを使用していました。
なので、新任のスコッチ刑事(沖雅也)が新製品のMGCローマン2インチを持って登場したのは衝撃的だったと思います。
(私はリアルタイムでは見ていなくて、再放送で見たのが初めてです。。)
画像のシーンは先輩ゴリさん(竜雷太)とスコッチが署内の射場で対峙する場面です。
ゴリさんは3.5インチのハイパトの方が2インチのローマンよりも正確な射撃ができる、とスコッチを諭します。
ゴリさん「(ハイパトとローマンを並べて)この銃身の3センチの差が分かるか?」
スコッチ「銃身が3センチ長い分だけ拳銃を抜くのが遅れる」
ゴリさん「それだけか?それだけだと思うなら撃ってみろ。弾はいくらでもあるぞ」
(前話までゴリさんが2インチのハイパト改を使っていたことは忘れましょう)
(「弾はいくらでもあるぞ」とハイパトとローマンが同じ口径であるような表現も見なかったことにしましょう)
この時のスコッチは「過去の事件で自分が早く撃たなかったせいで目の前で先輩刑事が殉職した」というトラウマを抱えている設定で、より銃身が短い方が早撃ちができる、と強く主張していたのでした。
なので、初登場のローマンとともに非常にインパクトがあったと思います。
この時代以降は刑事といえばローマン2インチ、というプロップガンが当たり前になっていくので、ハイパトからローマンへの移行を感じさせる非常に印象的な話ではないでしょうか。
ただ、スコッチ刑事がローマンを使用したのは初期のみで、以降はトルーパー6インチ、44マグナム8 3/8インチとどんどん大きく、長い装備を身に着けるようになりました。
トラウマを解消した、ということなのだと解釈しています。。
◆◆◆
そんなローマン2インチですが、「実物はレア銃だ」という話を聞いたことがあります。
確かにシュラウド付きのニューローマンは月刊Gun誌で特集されたものの、旧ローマンの記事は記憶にありませんし、Gun図鑑みたいな本でも、ほとんど見かけないような印象です。
そこでいつものようにネットで探してみました。
その前にまずMGCの画像。
MGC(ABS)の左右画像
【参考】海外サイトで見つけた実物画像
こっちが実物なのですが、MGCに似すぎててビックリします。
画像なのでサイズ感までは分かりませんが、サイドプレートの分割ラインとか詳細を除けば全体的にMGCの再現度が高いことが分かりますね。
CAWローマンでは、実物どおり少し短いエキストラクターロッド(エジェクターロッド)を再現しています。
これでさらにリアル感がアップした感じです。
CAWローマンはMGCリバイバルながら進化を遂げていて、高かったけど買って良かったなーと思えるモデルガンでした。
ここで私の勝手な分析というか妄想なのですが、
「なぜMGCローマンの刻印は2インチだけ”LAWMAN MKIII”と一列表記なのか」、
という疑問に対する答えです。
おそらく設計当時は不鮮明な写真等で刻印が把握しづらく、実物の2インチの刻印が一列表記に見えた(誤認した)のではないでしょうか。
実は私が実物の画像をパっと見た時に「初期のABSと同じ一列刻印だ。MGCはリアルだったんだなー」と一回誤認した後、よく見たらHWと同じ二列刻印だった。という体験をしたからなのです。
もちろんこれは私の勝手な偏見に基づく考察なので、流してください。。
そんな感じでMGCは思ったよりもリアル、ということが今更ながら分かったわけですが、今後もCAWには不定期で良いのでリバイバル生産をしてほしいと思います。
サイドプレート周りも改良して決定版に進化してほしい、なんて思ってしまいますが、そしたら価格はもっと上がってしまいますね。。
***
MGCMC BONDCHOP
http://mgcmc.blue.coocan.jp/
この記事へのコメント
>九州の星野くんさん
コメントありがとうございます。とても励みになります。
非常に近い趣味みたいですねー。嬉しいです!
私も出来がチョット残念でも当時のモデルガンたちは想い出補正もあって思い入れも特別です。
なので、思い切って手放しても、結局は手放したよりも高く買い直したりして、何やってんだか、の連続です。
今後ともよろしくお願いします。
コメントありがとうございます。とても励みになります。
非常に近い趣味みたいですねー。嬉しいです!
私も出来がチョット残念でも当時のモデルガンたちは想い出補正もあって思い入れも特別です。
なので、思い切って手放しても、結局は手放したよりも高く買い直したりして、何やってんだか、の連続です。
今後ともよろしくお願いします。
Posted by MGCMC at 2024年11月23日 12:40
豊富なコレクション素晴らしいです!
ブログの画像達を見てるだけで幸せになります。
時代背景やドラマの話題もド・ストライクです。
最新の銃達(タナカワークスやハートフォード、他のリバイバル品)も素晴らしいですが、リアリティは別にして、やっぱり青春の思い出の銃達は別格です。
すいません、興奮してコメント連投しました。
少しおとなしくブログ拝見します。(笑)
ブログの画像達を見てるだけで幸せになります。
時代背景やドラマの話題もド・ストライクです。
最新の銃達(タナカワークスやハートフォード、他のリバイバル品)も素晴らしいですが、リアリティは別にして、やっぱり青春の思い出の銃達は別格です。
すいません、興奮してコメント連投しました。
少しおとなしくブログ拝見します。(笑)
Posted by 九州の星野くん at 2024年11月22日 20:38
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