2024年11月15日
お願い!バラさないで!
"MGC P08 Royal Blue Custom by HWS"
現在ではウェスタン系を得意とする愛知県のトイガンメーカー、ハートフォード(HWS)。
かつては数あるモデルガンショップの中のひとつでした。
比較的リーズナブルで質の高いショップカスタムが特徴で、後に東京にも出店し、廃業した東京CMCの金型を引き継ぎリバイバル生産を行い、ついにはオリジナル製品を開発、発売するメーカーとなったのでした。
ショップ当時に得意としていたカスタマイズのひとつにABS樹脂製の表面にメッキを施し、さらにガンブルー処理を行う表面仕上げがありました。
1980年代初頭にコクサイがABS樹脂製モデルガン新製品ブローニングM1910に採用した表面仕上げは通称「メタルフィニッシュ」と呼ばれ、コクサイ以外の他メーカーであるマルシン、MGC、WAからも次々に取り入れられ、ブームとなりました。
現在ではあまり考えられませんが、当時は各地のモデルガンショップでもメッキ加工をしたり、独自のカスタムを多数製作しており、ハートフォードもその中のひとつでした。
ハートフォードでは独自メタルフィニッシュを「ロイヤルブルー」と呼び、各社モデルガンに加工したメッキカスタムを販売した他、メッキ処理前に刻印や外観カスタムを施したオリジナルショップカスタムも多数製作販売していました。
これらの実績がのちのメーカー立ち上げにつながったと思います。
画像の個体はMGCのABS樹脂製モデルガン、ルガーP08がベースのロイヤルブルーメッキカスタムです。
表面仕上げ以外は特に変更はないベーシックなカスタムだったと思います。
製作は1980年代半ばから後半くらいだと思うので、購入後未発火ながらメッキ面の退色が進行しており、艶も落ちてきています。
購入当時は「ロイヤルブルー」の名称にふさわしい光沢のある美しい表面でした。もともとハートフォードのメタルフィニッシュは茶色っぽい色調であったので、現在でもかろうじてその雰囲気は保っているかと思います。
実はMGCメーカー純正でもメタルフィニッシュのルガーP08は発売されていました。
画像の左がMGC純正で右がハートフォードとなります。
MGCでは「メタルブルー」という名前の表面仕上げでした。
その名の通り、MGCは藍色に近い青系の表面で、いわゆる本家コルトの「ロイヤルブルー」を彷彿させる美しい色調でしたが、とにかく表面のブルー層が繊細すぎて劣化しやすく、良い状態で表面を維持するのが難しいのが特徴でした。
MGCメタルブルーは「発火」「手の油」「外気」「乾燥」に非常に弱く、画像ではわかりにくいですが、指が触れるグリップフレーム前部は特に表面劣化が早く現れます。
入手当時は未成年でメンテナンスの知識や習慣が乏しく、せめて遊んで箱にしまう際に布で一拭きして脂を落としておけば、、という後悔があります。
ある時期からは保管方法に気を付けるようになりましたが、劣化の進行は抑制できても元の状態が復活するわけではないのがツラいところです。
上からハートフォード、MGC純正メタルブルー、MGC純正シルバー
繊細過ぎるMGCメタルブルーとは逆に表面がかなり丈夫なのがMGC純正のシルバーメッキです。
画像のシルバーのMGCルガーはABS樹脂製モデルガンにシルバーメッキを施した純正品で、製造時期は他の個体と変わらないものの、表面のシルバーは健在です。
さすがに経年でくたびれてきた感じもありますが、メッキ層も厚いので研磨剤で軽く拭いても剥がれることなく光沢が復活します。
(サテンシルバーは艶消し感が失われていくという注意点はあります)
私の手持ちのモデルガンは無知ゆえ保存状態が悪いものが多く、あまりちゃんと紹介できるようなものではないのですがMGCルガーは比較的マトモな状態で残っていました。
それはほとんど発火しないで保管してあったのが要因なのですが、それには苦い記憶があるのです。
MGCモデルガンのルガーP08は初代亜鉛合金製(金属ルガー)と二代目ABS樹脂製(プラルガー)があります。
金属ルガーは「ダイナミックシリーズ」と銘打たれたリアル設計が売りで、非ブローバックのスタンダードながら傑作と称賛されています。
2代目となるプラルガーはどうしてもブローバックモデルガンとして製品化したかった、というMGC(というかタニコバさん?)の執念のような気合を感じる超独自設計のモデルガンでした。
リアルな構造を重んじる「鑑賞派」マニアからは「プラルガーはMGCの創作品でルガーではない」と評されてしまうほどの独創的なメカが特徴でした。
その独自設計の恩恵により、プラルガーはめちゃくちゃ調子よく発火し、私も最初に買ったノーマルABSのオープンカート(5mmキャップ)の完成品はすごい調子良かった記憶があります。
しかし、、、当時まだ子供だった私には分解した後に元に戻すことができず、何日も格闘してようやく完成した大事なプラルガーは傷だらけで悲惨なものでした。。
今でも覚えているのが、画像の組立箇所。
「シアースプリング」なるこのパーツ、ちゃんと正規の位置に留めるのが非常に困難で、うまく収まった、と思ってもグリップを取り付けるときにバイーン!と外れてしまったりするのです。
発火後のメンテナンスだけでなく、木グリに交換する、というだけの場面でも高確率でスプリングが外れてしまうので、それはもう、当時は泣きながら組み立ててたような感じでした。
後の私のプラルガー初号機はどんどんボロボロになり、さらにはコンバットマガジンで見た「MGCにLSのP08アーティラリーのバレルをくっつけるカスタム」に影響を受けてしまい、プラモ屋で買った新品のLSでチャレンジしたものの、見事に失敗。
結局MGCもLSもジャンクボックス行きとなってしまいました。若気の至り、では済まない切なくてもったいない想い出です。
なので、数年後何回かプラルガーを購入する機会があったのですが、絶対に発火せず、バラさないで済むようにしよう、と心に誓った結果、なんとなく2号機以降のルガーは小ぎれいなまま残ったという感じなのでした。
これは私が単に不器用なだけで、モデルガン愛好家の皆様は全く気にならないレベルなのだとは思います。他にはMGCプラパイソンも、できれば分解組立したくないモデルガンのひとつです。。工場で組み立ててる人に講師になってほしかったです。。
もしタイムマシンがあったら、ルガーを分解しようとしている子供の頃の私に向かって
「バラさないでーーーー!!!」
と叫んで止めます。
◆◆◆
プロップガンとしてのルガーP08といえば、「太陽にほえろ!」のボス(石原裕次郎)の専用銃という設定がありました。
劇中におけるルガーP08の設定として「命中精度が良い高性能銃」とされている感じで、殺し屋が愛用していたりする場面もあります。
ボスは射撃の名手という感じで扱われているので、第123話「孤独のゲーム」では犯人を抜き撃ち1発で仕留めます。
ちなみに映画「太陽への脱出」(1963 監督:舛田利雄 主演:石原裕次郎)でMGC特製のルガーP08プロップガンが登場したことが有名なので、「太陽にほえろ!」のボスがルガーを持っていても何となく納得してしまいます。
ただ、当然、ルガーP08が実際の警察装備に実在しないとは思いますが。。
そういうことを言い出したら、ハイパトもローマンも同じなので、素直に作品を楽しんだ方が良いと思います。
なので、作品の中の世界では「ルガーP08は敵・味方問わず憧れる最上級ステータスモデル」として観るのが良いかと。。
おそらく戸井田工業製の電着プロップガンと思われますので、トグルは上がらず、排莢もしません。
電着ルガーは他作品でも見かけることがあったので需要はあったのだと思います。
私の大好きな「大激闘マッドポリス'80」では主人公の氷室(渡瀬恒彦)が装備しており、オープニングでスピンを決める姿にしびれました。
こちらも電着ルガーだったと思います。この時代、過激なガンアクションの作品は多かったですが排莢するプロップガンはほとんど見かけなかったですね。
映画「太陽への脱出」ではタニオアクションで排莢していた、というので技術的には方法がいくつかあったと思いますが、安定した発火性能を発揮するCPベースのプロップガンが登場するまでは少数派だったのでしょう。
そのうちトグルがポンポン動くプロップガンが登場する作品が出てくるのを待ちましょう。。
** MGCMC BONDCHOP
http://mgcmc.blue.coocan.jp/
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