2024年08月21日

MGCビジェールのミリポリ


MGCビジェールのミリポリ

"Hobby Fix / ZEKE Military and Police Pre M10 5inch"

このブログにて普段はほとんど取り上げない金属モデルガンです。
プロダクトジーク(ZEKE)の亜鉛合金製モデルガン、ミリタリーポリス(ミリポリ)です。
モデルガン本体とカートリッジという商品構成ですが、特徴的なのがグリップが付いていないということです。
多くのモデルガンマニアがグリップ交換をして楽しんでいること、特に実物サイズの場合は様々な選択肢があるので、面白いアイディアだと思います。私もたいていはグリップを変えてしまうので。。
あとZEKEミリポリのマニュアルは製品情報の他、実物やモデルガンの情報が多数紹介されており、非常に読み応えがあるのも楽しいです。

このZEKEとは数々のリアル設計のモデルガンでおなじみのホビーフィックス(HF)のブランドです。
古くからエアソフトガン用カスタムパーツのブランドとして有名です。
そして、そのルーツはZEKEミリポリ誕生にも大きく関わっています。

かつてZEKEではタナカのペガサスガスガンM29やM36の外装カスタムパーツを発売していたのですが、絶版となっていました。
そのうちM29用パーツの金型を徹底改修し、2019年にタナカのモデルガンM29 Ver.2をリアルな亜鉛合金モデルガンに変身させるキットを発売したのです。
これはあくまでタナカモデルガン用のカスタムパーツだったわけですが、その実績を基に2021年に完全新規となる亜鉛合金製のミリタリーポリスの製作がHFより発表されたのです。

一部ショップの取扱いはあったものの原則予約販売だったので、発表後に後先考えず予約を入れました。
もちろん通常のモデルガンと比べて高価な設定ではありましたが、S&Wリボルバーが好きだったこと、かつてMGCがビジェール(自社発行の小冊子)に製作発表したのと同じ仕様だったこともあったので購入しようと思ったのでした。


MGCビジェールのミリポリ


モチーフは"M10"というモデルナンバー付与以前の5スクリュー、5インチモデルとなっています。
フロントサイトは古い半月タイプと以降のランプタイプの2種があり、予約時にはどちらか選ぶことができました。
両方とも買うというツワモノもいたと思いますが、私のような庶民にとっては予算の関係上どちらかを選ぶしかなく、悩んだ結果ランプタイプにしました。

悩んだのには理由があります。それは、やはりビジェールの存在です。


MGCビジェールのミリポリ


MGCビジェールのミリポリ


1975年発行のMGCビジェールには幻の新製品ミリポリが取り上げられ、試作品?と宣伝イラストまで掲載されていたのです。
その写真のランプサイトがとても印象的で(イラストでは半月サイトにも見えますが)、悩んだ挙句、ランプサイトを選択したのでした。

私はこのビジェールを発行よりも十年以上後に入手したのでリアルタイムではなかったのですが、ミリポリの写真は合成などではなく実在したということ、真鍮製で六研製作であるっぽいと聞きました。
かつて六研は自社名義で真鍮製ミリポリ(スタンダードとデラックス)を発売していましたが、ビジェールの個体は製法もフォルムも別物とも言われており、その正体は六研の提案を受けてMGCが発注した試作品と噂されていました。
(その昔、旧ブログで「ビジェールのミリポリは実在するのか?」と書いたら、詳しい方がそう教えてくれました)
渋谷のJACに長年参考展示されていたのが、同じ個体かも?とZEKEミリポリのマニュアル冒頭のコラムでも触れられていました。
ホルスターやグリップ装着見本でGun誌広告にもしょっちゅう登場してたので、実は日本一有名な真鍮ミリポリかもしれませんね。

結局のところ、銃刀法改正(1977年)でミリポリ他、MGC高級シリーズは実現する前に消滅することになり、MGCミリポリは幻となってしまいました。
ずっと後になって発売されたMGCのM586/686の金型を利用したミリポリカスタムがニューMGCから発売されたこともありましたが、Lフレームなので(ミリポリは原則Kフレーム)、ちょっと太めでした。
それでもMGCでミリポリを出したのは、ビジェールの幻が根底にあったのでしょうか。。

ちなみにもっと古い1970年頃のMGCニュースでは亜鉛合金製コンバットマグナムをベースとしたミリポリが紹介されていたりもしたので、ミリポリは昔から人気モデルであったのだと思います。

月刊Gun誌にて「六研製モデルガンは製作が六研、販売がウェスタンアームズ(WA)となっていた時期がある」とあり、真鍮ミリポリを「ウェスタンアームズのミリポリ」と言っていた方もいた記憶があります。

そんな六研=WAという時代にMGCとWAの関係もあったようです。
実際にMGCボンドショップでウェスタンアームズの高級モデルガンを販売したこともあったと聞きました。
そういった事情からMGCの高級モデル戦略はWAに任せる感じのプロジェクトだったのでしょうか。
MGC自伝では旧知の仲、といった感じで紹介されていましたが、このあたりの詳細は触れられていませんでした。
なんとなくですが、のちのMGC・WA提携の雰囲気を考えると、元々規制前からMGCの高級ブランドとしてWAを置く、という基本路線の構想は出来上がっていたのかもしれませんね。
銃刀法改正がなければGM2カスタムの横で真鍮ミリポリが売られていたのかも??

そんな妄想はさておき、何十年の時を経て、ZEKEミリポリは幻の具現化として誕生しました。
しかしここでやはり資金調達問題。結局モデルガンをいくつも手放すことで何とか捻出できたものの、気軽には買えないのが高級モデルガンです。

とは言え、モデルガンを売ってモデルガンを買うの繰り返しなので、手放してしまったコレクションたちに救われた、というのも実感としてありますね。
モデルガンは他の趣味に比べてリセールバリューがある方なのかな、と思ったりもします。
複数丁が1丁に変身するので趣味スペースのダウンサイジング効果?みたいな利点もあります。


MGCビジェールのミリポリ


スマートなバレルにランプサイト。
勝手な想像ですが、このランプサイト版を選んだ人はビジェールの影響があるのではないかなーと思います。
古いミリポリだと半月サイト、というイメージももちろんあるのですが、MGCのモデルガンから趣味の世界に入ったので、それが一番強いのです。


MGCビジェールのミリポリMGCビジェールのミリポリ

↑ 海外サイトより収集したミリポリ画像




そんなわけでビジェールと同じ、という理由だけでランプサイトを選んだわけですが、そもそもドンピシャズバリの本物って存在するのか気になりました。
ZEKEミリポリでランプサイトも選択できたのは思い入れの強い昭和マニア向けサービス?とも思いました。
ビジェールに紹介されたのは約50年前。半世紀も前のことなので実物の取材も大変だったろうし、ハイパト41の例もあるし、創作の部分もあるのかな、、、などと思いながらも外国のサイトを探しまくって、なんと5スクリューのランプライトの画像を見つけました。
フックハンマーとも呼ばれる特徴的な形状のハンマーや刻印など、ZEKEミリポリと完全に一致しています。
しかし発見できた画像は4インチだけ。。5インチの画像は私のリサーチ能力では見つけることができませんでした。
ちなみにこの2丁の4インチは別個体みたいなので、探していればいずれ5インチも見つかるかも。。


MGCビジェールのミリポリ


MGCビジェールのミリポリ


樹脂製モデルガンで唯一のミリポリ5インチを製品化していたのがハートフォード(HWS)です。
ZEKEとHWSで並べてみるとハンマー、刻印、グリップなどの違いがありますが、これは軍用モデルとコマーシャルモデルの違いです。
ちなみにコクサイはミリポリを金属時代から何度か製品化していて、確か2代目は長い銃身のモデルもあった気がします。

HWSミリポリですが、元々はCMCのABS樹脂製M19・スマイソンの金型を引き継ぎ、リバイバルとして発売していた製品をベースに、かなりの新規設計を追加して製品化したものです。
戦前の軍用モデル、いわゆる「ビクトリーモデル」をモチーフとしています。
ベースモデルが古いので細部の形状やサイズが異なる点がありますが、3スクリュー、アジャスタブルサイトのコンバットマグナムを基に5スクリュー、固定サイトのミリポリをバリエーション展開するとは執念に近いものを感じます。

ZEKEは最新技術での採寸、設計なので、かなりシャープでスリムな印象を受けます。
実物も実際に見るとかなりスリムだそうで、実際にネットや本で見る本物のニッケルモデルはソックリです。
このあたりはZEKEが金属モデルガンということに拘った要因のひとつだと思います。
モデルガンは安全策として脆弱な材質を使用し、ギリギリの強度で成立しており、負担のかかる部分だけを意図的に太くするなどし、それを目立たなくするために、ボテっとしたデザインになりがち、と聞いたことがあります。
プラ製だとその傾向が顕著な印象です。リアルな見た目にすると脆くなり、安全に強度を出そうと工夫するとスタイルが崩れてしまう、みたいな感じでしょうか。

MGCのプラパイソンは実物より一回り大きいと言われていて、それに見慣れていると、海外で見た実物パイソンはダイアモンドバックに見えた、なんて感想も聞いたことがあります。。


MGCビジェールのミリポリ


後ろの箱はミリポリ用ではなく、実は.22マスターピース用です。
何十年も昔、東京タワーボウリング場で行われていたミリタリーショーで買ったものです。
ボロボロで油の匂いもすごかったのですが、なんか古くてカッコいいな、と思い買ったのでした。

今ではこういった古い箱も高くなったりしてますが、当時は結構お求めやすい感じだったと思います。
同じイベントで官公庁納品用の箱とか1個1000円くらいで大量に売られてたりもしました。
納品された本体は厳重に保管されますが、元箱等は梱包材と同じ扱いで、廃棄されていたのだと思います。
おそらく当時はそんな廃棄品の仕入れが可能だったのかもしれませんね。

.22マスターピースは競技用に輸入したものだったのでしょうか。。
「太陽にほえろ!」でジーパン(松田優作)はミリポリ22を使ってましたが。。

◆◆◆

今回取り上げたZEKEミリポリは令和の新製品でありながら、既に絶版となっています。
それは既に金型改修しているので、物理的に再製造できないという明確な理由があります。
ミリポリ(Pre M10)→マスターピース(Pre M15)→コンバットマグナム(M19)という順番で金型を改修していく、という順番で製造販売が進んでいます。
前述のとおり、原則予約販売なのですが、ミリタリーイベントでサンプル品展示が出ていることが多いので、それを見てから購入検討する、というのも良いかもしれません。

アクションも滑らかで、いつも手元に置いておきたい感じですが、貧乏性なもので、少しでも長く維持したいのでちょっと遊んだらすぐに箱にしまっています。。
なんかカッコいいディスプレイケースみたいのに入れて飾っておくのも良いかもしれませんね。

** MGCMC BONDCHOP
http://mgcmc.blue.coocan.jp/




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