2024年09月25日

主観コマンダー

主観コマンダー
"GM2 short slide custom"

GM2ショートスライド改です。
旧ブログでは何度か取り上げていた話題ですが、改めて紹介します。

MGCのABS樹脂製ガバメントモデルガン、GM2は基本的にガバメントのみのモデルです。
ガバメントより少し短いコマンダーは兄弟モデル(弟分?)といった感じで人気があったと思いますが、短いだけでなく専用部品も多いため、かなり開発・製造コストが掛かることが想定され、モデルガンとしてはバリエーション展開するのはメーカーとして製品化のハードルは高そうです。

そんな背景もあって、MGCのGM2が現役の時代、ちょうど世の中にはコマンダーのモデルガンは販売されていなかったと思います。
厳密にはGM2が発売された1974年から1977年の銃刀法改正まで金属製モデルガンのコマンダーは存在していたのですが、銃身分離型セミオートマチックの金属製モデルガンは発売禁止モデルとなってしまいました。

スズキからABS樹脂製モデルガンのコンバットコマンダーが発売されたのは1980年代に入ってからでした。
その後、MGCからニューガバメントGM5が発売されたものの、やはりガバメントのみ。
WAからGM5ベースのカスタムという形でコンバットコマンダーが発売されたのはもう少し後のことでした。

主観コマンダー

過去の知識でガバメントが5インチ、コマンダーが4インチという感じで何となく記憶していたのですが、実はコマンダーは4.3インチというのが正しいと言われるようになりました。
こういった常識のアップデートは趣味の世界であれば、よくあることなのだと思います。

コンマ以下の寸法という細かい部分ではありますが、考えてみたらM29の6インチと6.5インチではだいぶ見た目の印象も異なるのでリアルさを追求する上では重要な部分ですね。

主観コマンダー
MGC機関誌ビジェールに掲載されていた「コマンダーを造っちゃおう」です。
GM2をベースとして自分でカスタマイズしてみよう、というモデルガンの楽しみを紹介する記事です。
当時これを見てコマンダー化をチャレンジした方も多いかと思います。

記事ではスライドの中間を10mmカットするように示されています。
10mmは約0.4インチなので、まず5インチが4.6インチに短縮されることになります。
ノーマルバレルのインサートに当たらないよう余裕を持って設定された数値と思われますが削り面の仕上げなどを考慮すると、もうちょっと短くなってちょうど良いサイズになるのかもしれません。
スライドの中間を詰めるのはフロントサイトや前端部の面取りを活かすためと思われますが、中間を詰めずに先端をカットしてフロントサイトを移設する方法も紹介されています。

フレームはガバメント寸法のまま無加工とする前提になっているようで、加工するのはスライドとバレルのみというコマンダーというよりはガバメントのショートスライド化という感じになります。

主観コマンダー
画像の2丁は中古で入手したもので、入手時には既にスライドがカットされていました。

オールブラックの個体はノーマルGM2がベースのコマンダー化カスタムです。
フレームシルバーの個体は希少なWAコンバットカスタムをベースに大胆にカスタマイズされています。

それぞれ中古入手ゆえ、ショップカスタムか個人製作かは不明ですが綺麗に仕上げられています。
ただ、ツギハギによりノーマル時よりも相当に強度が落ちていることが懸念されるので発火には向かないと考えています。
よって入手時から手動によるアクションを確認するのみになっていますが、その範囲であれば円滑に作動します。

興味深い点はこの2丁はスライド長が異なるということです。
おそらく、スライドを詰める長さや仕上げ方法は担当ガンスミス(加工した人)の主観に頼る部分が大きいのかな、と思います。
細かい部分の正確な寸法は設計図面が無いと把握するのは現在でも難しいと思いますが、ネットも無く文献も少なかったであろう当時は個々のガンスミス達の勘とセンスに大きく左右されるのではないでしょうか。

ビジェール記事の「10ミリ」というのは個人ガンスミスたちに理解しやすい丸めた数字を提起したとも考えられますが、あとは「ガバメントを短くするだけではコマンダーにならない」というカスタマイズ難易度の高い部分も影響があると考えられます。

主観コマンダー

ガバメントとコマンダーの違いはスライドだけでなくフレームも短くなっています。
(厳密にはグリップセフティも短いですが、ガバ用を削ればそれっぽい形になります)
フレームの前端、ダストカバー部分が短くなっているのがポイントです。
フレームだけ短くすると、リコイルスプリングプラグが入る部分(スライド下部)を後退させないと、ここに大きな隙間ができてしまうのです。

ここをコマンダーの寸法に従って、きっちりとカスタマイズするにはスライド下部を延長あるいは移設し、それに合わせてフレーム先端に繋がる溝部分も整形が必要になってきます。

ビジェール記事の「中間カット工法」をアレンジして、繋いだ際に隙間が出ないようにできれば、よりコマンダーらしいルックスに仕上げることができるかもしれません。

主観コマンダー
昔のコルトの広告です。
イラストではありますが、ガバメントとコマンダーの違いがよくわかります。

ちなみにGM2ベースのコマンダーはMGC純正として「ボブ・キャット」なるカスタムが存在すると記録にあります。
ただ、過去にほとんど見たことがなく、詳しい仕様は不明です。
おぼろげな記憶ではオールブラックでショート化されたGM2で、スライドに追加刻印があったと思います。
MGCの資料によれば1978年に製作されたようで、MGC創立20周年シリーズより少し前で、MGCカスタムガンワークス(MCW)設立前の製品と考えられるので生産数も少ないのではないでしょうか。

WAからGM2時代はコマンダーカスタムが存在した、という記録は見つかりませんでした。
ただ、その後にWAからはGM5カスタムとして新規金型スライドを投入したコマンダーが登場します。コンバットカスタムからのスタートで人気を博し、のちに固定サイトのノーマルを追加していくという面白い商品展開でした。
MGCからノーマルのコマンダーがカタログモデルとして発売されるのはスモールカート末期の1992年発売のGM10まで待つことになります。
既存のGM5系列の発展版ながらヘビーウェイト樹脂を採用し、新規設計の専用スライドを持つ傑作モデルガンでした。
初めて38スーパーを追加したのもGM10でした。

このように既にガバメントを発売していても、メーカーとしてコマンダーを製品化するにはハードルが高いことが伺えます。

近年ではタニオコバGM-7をベースにサードバーティのイナーシャセンスがコマンダーを製品化したケースがありましたが、標準品に対して価格面ではだいぶ上がってしまっていましたね。
あと、BWCのキンバー・ショートスライドカスタム等も同様の手法のカスタマイズがありますが、やはり価格的には高級カスタムの部類という印象です。

ガバメントからお手軽には変身できないのがコマンダーなんですかね。

MGCナショナルマッチ(GM4)にはショートスライドスキッパーというカスタムが存在しますが、コマンダーという呼称は使われていません。ただ、「コマンダーを造っちゃおう」にはバレルのカスタム方法(ポート加工の寸法)が載っているので、コマンダーの仲間と思っています。

いずれ、ホームページ版にできる限りのGM2&GM4のバージョンを載せたい、と思っているのですが、謎が多く全貌も分からないので、どこまで情報を纏められるか、で悩んでいます。。

** MGCMC BONDCHOP
http://mgcmc.blue.coocan.jp/




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